書籍『日本国憲法のお誕生 -その受容の社会史』江橋崇著
H.O
11月3日で日本国憲法は公布76年を迎えます。
日本国憲法はアメリカに押しつけられたもの、だから日本人自身の手で憲法を制定しよう、という声があります。はたしてそう
なのか。まずは歴史の“事実”を正しく捉えることが肝要でしょう。
日本国憲法制定の経緯についての著作や資料は数多ありますが、本書は日本国憲法制定時の祝賀行事、その普及のためにつく
られた記念品やグッズ、新憲法のテキスト・解説書、記念映画等々を紹介しながら、いろいろなエピソードとともに、憲法の制
定を国民がどう「受容」したのかを辿るものとなっています。記念品・グッズについては、紙芝居、レコード、いろはかるた、公共交通機関記念切符、記念切手・葉書など、その現物の写真もふんだんに掲載されており、興味深いものだらけです。本書には、当時様々な記念イベントが催され、多くの民間団体や国民が憲法の制定を歓迎した様子も描かれています。当時政府が新憲法を普及・定着させようと『新憲法の解説』(内閣發行)、『あたらしい憲法のはなし』(文部省)等々を発行し、祝賀行事の開催や憲法普及會の組織化と活動などを精力的に展開したことも詳述されています。
こんにちの日本社会をめぐる内外の状況は新憲法制定当時とはいろいろと違ってきています。したがって、その後国民も政府も、憲法についての捉え方をいろいろと変化させてきています。しかし、新憲法が制定当時どう語られ、どう国民に受け入れら
れたのか、あらためてその“事実”に向き合ってみると、多くの人々が、少なくともこの憲法が制定されたことの大きな意味を
再発見するように思われます。
<書籍情報>
著者は江橋崇氏 (法政大学名誉教授)。2020年、有斐閣から刊行。定価 は2,420円(本体 2,200円)。
【最近刊行された憲法関連書籍】
『憲法裁判の法理』渡辺康行著 2022年10月、岩波書店から刊行。定価は8,470円。
『わが国に迫る地政学的危機 憲法を今すぐ改正せよ』櫻井よしこ、ケント・ギルバート著 2022年10月、ビジネス社から刊行。定価は1,500円+税。
『吾輩は後期高齢者の日本国憲法である』西修著 2022年10月、産経新聞出版から刊行。定価は1,760円(本体1,600円+税 )。
【最近公表された憲法関連文献】
巽智彦「生活保護基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量の範囲について」法律時報11月号
津野田一馬・プラットフォームビジネス研究会「デジタル・プラットフォームにおけるガバナンスとルールメイキング(下)-あるいは、表現の自由の私法的基礎」法律時報11月号
山崎友也「在外邦人国民審査権訴訟上告審判決(最高裁令和4年5月25日大法廷判決)」法学教室11月号
御幸聖樹「子どもに対するコンピュータゲーム規制」法学教室11月号
江原勝行「演習 憲法」法学教室11月号
櫻井智章「『セックスワークにも給付金を』訴訟第一審判決(東京地判令和4・6・30)」法学教室11月号
市川正人「表現活動への国家の『援助』と表現の自由」判例時報10月21日号
布施祐仁「平和憲法の価値(2) 9条は自衛官の命も守ってきた」クレスコ11月号