法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です
  憲法はロック   2018年10月15日  
  島 昭宏さん(弁護士)  
 

 12歳のとき、狭山事件のことを描いた漫画を読み、フォークの神様・岡林信康の「手紙」という曲を聴いて、日本にも部落差別という現実や人権の問題があることを知った。
 13歳のとき、有吉佐和子の『複合汚染』という本を読み、環境問題、食糧問題等の要因から地球の有限性を知った。
 16歳のとき、クラッシュなどのパンクバンドやジョン・レノンの曲を聴いて、3つのコードと8ビート、そしてギターを武器に社会と闘うという手段があることを知った。これこそが自分の道だと確信。
 18歳のとき、大学進学を口実に上京して、バンド活動を始めた。自分なりに社会を歌った多くの曲を作ってCDをリリースし、全国をツアーで回った。
 42歳のとき、自分の力不足を知り、ギターだけじゃなく、もう一つの武器を持つためにロースクールに入った。そこで初めて憲法を学んだ。

 憲法の最初の授業で、自分があまりに憲法のことを知らなかったことに驚いた。同時に、日本国憲法の理念がロックのスピリットそのものであることを知って、胸が熱くなった。
 13条「すべて国民は個人として尊重される」
 どんな人であっても、同じように価値があり、同じように大切な存在だと認められる社会。岡林信康は歌っていた
 −私たちの望むものは 社会のための私ではなく 私たちの望むものは 私たちのための社会なのだ−
 12歳のとき、この曲を聴いて興奮したけど、それはもう憲法に書いてあったんだ。

 そして、これまでとは違う、まったく新しい社会を作っていくんだっていう思いが溢れている前文と9条。
 「俺もやめるから、みんなでやめよう」
 こんな呼びかけも悪くはない。でも、
 「思いはみんな同じだって信じてる。だから、俺は先にいち抜けるわ」
 こんな風に言い切るって、本当にカッコいい。こっちの方が絶対にインパクトがあるし、こいつのことは裏切れないなって思うんじゃないかな、普通。そして、自分もそんな風になりたいって。

 さて、現政権。この憲法を「みっともない」と切り捨て、「平和を愛する諸国民って誰ですか?・・どこにもいないんですよ。インチキなんですよ」と断じて、改正を企てている。
 こういった言葉に対して言いたいことは山ほどあるけど、それより、こうなったら憲法をみんなで語ろうぜ。とことん話をしよう。
 改正案が発議されれば、国民投票が現実のものになる。そのとき、頑なに護憲を叫んだり、流れで改正に突き進むなんてことは、どっちも違うと思う。せっかく国を挙げての憲法フェス、この国の誰一人経験したことのないビッグイベントなんだから、本気で楽しまなきゃ。その先には、きっと今よりずっと成熟した社会が待っている。

 来るべきその日のために、憲法フェスの挿入歌にでもなればと「Dance to the 9」っていう曲を作った。友だちに協力してもらって、ビデオまで作った。
 これを多くの人たちに観てもらって、みんなが9条を一言一句間違えずにラップで歌えるようになったらと願っている。憲法をそこまで身近なものにしてから、「みっともない」かどうか、改正すべきかどうかを判断すべきだと信じているから。



島昭宏(しま あきひろ)さんのプロフィール

1962年名古屋市生まれ。1985年よりロック・バンドthe JUMPSボーカル。翌年にはブルーハーツ、レピッシュらとオムニバス・アルバム『JUST A BEAT SHOW』を発表し、これまでに多数のCD等をリリース。また2010年末よりロック弁護士となり、2か月半後に福島原発事故を迎える。2014年には約4000名の原告による原発メーカー訴訟を提起し、新しい人権「ノー・ニュークス権」を提唱。これを周知するため、島キクジロウ&NO NUKES RIGHTSとしても活動を展開中。 

アーライツ法律事務所

2019年1月5日(土)13時〜"KNOW YOUR RIGHTS"渋谷Loft9
※トークゲスト;田中秀征/佐高信

当サイトに収載しているアート関連情報(1)(2)   CDブックス『ドレミファ憲法』