2020.08.10 オピニオン

コロナは本当に怖いのか? ~ナイトの「不確実性論」から見る

浜地道雄さん(国際ビジネスコンサルタント・「九条地球憲章の会」世話人)



はじめに

年初来のコロナ禍。筆者が悲憤慷慨するのは4月末に予定されていたNYCでの国連軍縮会議で、5年に一度のNPT50再検討会議が中止(延期)となったことだ。
そこでJALANA(反核法律家協会)と九条地球憲章の会が 共同参加発表する予定だったサイド・イベントも来年2021年1月(仮)に延期された。

 

以来、コロナ・パニックを注視してきたが、その主眼は「コロナは本当に怖いのか」という問題意識である。

 

1)恐るべきは(感染ではなく)死亡

豪華で華美、素晴らしい服というペテン師のふれこみを信じた王様。実はその下着姿を見て「え!?」と内心疑問を持ちながら、褒めそやす取り巻きたち。その王様のパレードを歓呼する群衆―。が、純粋な少年は見たままを発声した。「あれ! 王様は何も着てない!」―。有名なアンデルセンの童話は為政者、権力者に盲従することの危険を警告している。

 

年初来の「コロナ禍」は今やパニック。「パンデミック」「新型コロナ」「感染者数拡大」「(このままでは)死者40万人」―――。

TVのワイドショーを中心に、こんなおどろおどろしい「実況解説」が 連日茶の間に入り込み、国民は恐怖におののいている。

が、ちょっと考えてみよう。「裸の王様」を喝破した少年のように素直な目で事態を見てみよう。「え! 死亡者数は奇跡的に少ない。なのに、皆、パニックになるの?」と――。

 

2)奇跡的に少ない日本の死亡者

注視すべきは死亡(重症)者数であり、無症状の感染がなぜどの程度恐ろしいのか? ということで、記したのが4月。

https://www.data-max.co.jp/article/35358

数字、定義、根拠不足の新型コロナウイルス報道 「お化けの恐怖」に振り回される日本

 

日本(アジア)における死亡者数少ない理由は勿論筆者にはわからない。後年の専門実証を待つしかない。

が、ここでは「エビデンス(証左)に基づき、正しく恐れよう」という提案だ。

そこで示したデータ、4月の時点での「日本の死亡者数」は345人(東京都は93人)。その後の死亡者数の累計は、全国で1,011人、東京都では332人。(8月2日時点。厚労省発表)。

2020年はあと半年として、単純素人計算で倍とすれば、死亡者は人口1億3,000万人の日本では2,000人。人口1,400万人の東京都では600人だ。

要するに「爆発」は起きてない。

 

3)ナイトの「不確実性」論(1921年)

日本ではあまり話題にならないが、経済学(統計学)上、「有意」であるかどうか、シカゴ学派の碩学ナイトFrank Knight教授の「不確実性論」は行動決定する上で重要な要素だ。

筆者の解釈も交えて言えば;

・統計学上、エビデンス(証左)の無いものは「推測」であり、お化けの出現のように、恐怖が恐怖を呼ぶ。

・それがエビデンスとして確率がわかれば「対策が可能な」リスクとなる。

そこからRisk-Taking⇒先行投資・ビジネスが発生し、利潤が得られる。

 

ここで、注目すべきは、世界との比較で奇跡的に少ない「(日本での)死亡者数」だ。 即ち、今回のコロナ・パニックには対策が可能である。

他方、「感染者数、検査数」では統計上有意な数字は得られてないし、そもそも「死亡者」に比してことの重大性が異なる。

 

現下の日本では不確実な「推測」で恐怖が恐怖を呼び、社会システムが大混乱。経済不況による失業、生活破綻、失業による「自殺者」がコロナ死亡者よりも多いという試算もある。

ナイトの不確実性(1921)

 

4)未来を背負う若者の教育

その社会システムのうち、非常に重要なのが教育だ。

2月27日、安倍晋三首相は「全国一斉休校」要請を発出。報道によると荻生田光一文部科学大臣が知ったのは直前だったとのこと。そこから「要請」が全国に「指令」となり全国に発出され、各県の教育委員会などもフォローし、ほぼ全校が休校に入った。

https://epajapan.jimdofree.com/note-2/a/

 

統計グラフでは「若年層」のコロナ禍死亡者はほぼゼロである。

安部晋三首相はこの決定を「専門家に相談せずに決めた」と発言している。

「本当にこれで良かったのだろうか」と疑念をもつ関係者は決して少なくない。

実際、現場の教師も大変。勿論児童たち自身も。そして、子供らと家庭で「缶詰め状態」となる共働きやシングルマザー(ファザー)への絶望的ともいえる惨状も伝えられる。

 

かつ、事態は小中校に留まらず、高校大学閉鎖に及んでいる。さらに深刻なのはこのグローバル化の時代にあって「国際交流」「留学」という事業、試みがすべて展望できないということだ。

 

しかも、そこが引き金となって9月新学期案がでている。しかし、これはもう数年前に論議され、「否」の結論が出ている。にもかかわらず、このドサクサに紛れて蒸し返すというのはいかにも不条理、不合理である。

 

5)「非常事態宣言」は必要だったのか?

そして4月7日、政府は大々的に「緊急事態宣言」を打ち出した。

結果、市民生活、物流、雇用、交通等々あらゆる分野での社会システムを崩壊に導いているが、一体いかなる「エビデンス(証左)」に基づいて発令したものだろうか?

例年のインフルエンザなどの死亡原因の比較表を見るとコロナ死者は圧倒的に少ない。

コロナ対策専門家会議の尾身茂副座長は「他分野(経済など)の専門家も入れるよう提案したが政府聞かなかった」と吐露している。

その後、感染症の専門家らで構成していた政府の「基本的対処方針等諮問委員会」に、4人の経済専門家が加わったが、さあ、どういう施策となっていくのか?

政府は5月15 日、39県での「緊急事態宣言」を解除したが、また9都府県はそのまま。5月22日には関西三県、大阪、京都、兵庫で解除。そして5月25日には、東京、神奈川埼玉、千葉、一都三県、即ち、いよいよ全国的「解除」となった。

 

その判断の「目安」(の一つ)は「人口10万人あたりの直近1週間の新規感染者数が0・5人程度以下」とのこと。だが、要するに統計学上の有意性がない数値に右往左往する姿が「不確実」なのだ。

 

以上よりすれば、そもそも「緊急事態宣言」そのものが一体な何だったのだろうと大きな疑念を抱かざるを得ない。

かつ、ここから「緊急法案」さらには憲法(9条)改正に話が飛躍するという不条理。

 

6)専門家はいないのではないか?

TVのワイドショーを中心に多くのコメンテータに加え「専門家」が登場し、その持論を披露している。それぞれ、きちんとした知見の持ち主であろう。が、皆さん仰ることが異なる。つまりNovel(新型)であるがゆえに、新型コロナの専門家はいないのではないか。前述、尾身氏は「他の分野の専門家も入れて」と提案したし、もう一例として、ノーベル医学生理学賞授賞の山中伸弥教授。その「10万人死亡」が喧伝されているが、同教授は「私は感染の専門家ではない」と言明している。

医学研究畑の専門家もその研究が多岐に亘るし、他方同じ医療分野といっても臨床現場の医師の「悲鳴」は伝わってくる。

 

前述、専門会議は突然解散し、特別分科会が設営されたとのこと。混乱の極みともいえよう。

 

7)TRIAGEの現代的一例、スエーデン

日本ではあまり話題にならないTRIAGEトリアージ(フランス語で「選別」の意)。患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うこと。フランス革命後の戦争での野戦病院の仕組み。

日本と同様、ロックダウン(都市封鎖とは訳しにくいが)をしてないスエーデンでの死亡者は多い(大部分は高齢者養護施設にて)。

が、元々「寝たきり老人」がいない国。本人の事前同意をえることを大前提として、意識のないままの「延命治療」はしない。

1000万人の人口の8割を占めるキリスト教(ルター派)の原点、即ち、 「神の元に召される」という意識があり、人は寿命が来れば天に召されるという安寧感である。(死んだら)森に帰るという風土にも通じる。

現下の「封鎖」状態では、愛する親族を(あの世に)送り出すこともままならない日本とは異なる。

 

日本ではそこに残虐感、悲愴感が先立とうが、仏教にも「所業無常」「四苦」の 思想があるし、イスラム教にもインシャーラー(すべてアラーの思し召し)という 生活訓がある。非常に深遠なテーマである。

 

さいごに

コロナ死については「第一波」はなかったわけゆえ、第二波もないというのが筆者の観察だ。むしろ、赤十字社の「3つの感染症」は極めて明示的だ。

第1の感染症「病気」 ⇒ 第2の感染症「不安」 ⇒ 第3の感染症「差別」と巡回していく。

三つの「感染症」(日本赤十字)

 

コロナ禍パニックによる生活破綻は必至であり、将来を見据えての「経済と命」の対策を考えねばならない。

 

注)筆者個人の見解です。


◆浜地道雄(はまじ みちお)さんのプロフィール

 

1965年(S40)、慶応義塾大学経済学部卒業

同年、ニチメン(現双日)入社。石油部員としてテヘラン(イラン)、

リヤド(サウディアラビア)駐在

1988年(s63)、帝国データバンクに転職。同社米国社長としてNYCに赴任

2002年(h14) ビジネス・コンサルタントとして独立

現在、

・EF Education First Japan, Senior Advisor

(ノーベル博物館のスポンサー。世界最大級の国際教育事業)

・National Geographic/Cengage Learning kk, Project Consultant