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浦部法穂の「憲法雑記帳」

 

第20回 「正念場」


浦部法穂・法学館憲法研究所顧問
2018年1月22日

 今年は、日本国憲法にとっての「正念場」の年となるだろう。安倍政権がいよいよ「改憲」を仕掛けてくるであろうことは、ほぼ確実視されるから。いまのところ、連立与党の公明党は慎重な姿勢だとされ、また、各種世論調査でも「安倍改憲」には反対のほうが多いと伝えられている。だが、公明党は政権にとどまることだけが目的の政党だから、最後には押し切られることは目に見えているし、「世論」のほうも、政権やメディアによる世論操作によってコロッと変わる危険性があるから、全面的にあてにすることはできない。政権側の思惑にのせられて「改憲ムード」を高めることになってしまうのか、それともそれを打ち砕くことができるのか、この1年が大きな分かれ目となるだろう。

 それと同時に、世界全体を見渡したとき、いま、日本国憲法だけではなく、民主主義もまた「正念場」を迎えているようにみえる。世界各地で、全体主義的・国家主義的な政治勢力が勢いを増し、あるいはまた、一人の「指導者」による「強権独裁」が進んでいる。アメリカのトランプ政権誕生はその最も象徴的なものだといえるが、政権1年の間にかくもでたらめな言動・政策を連発しアメリカの信用・名誉・誇りを失墜させた大統領を、いまだに弾劾できないでいるというのは、アメリカの民主主義が機能不全に陥っている証左ではないかと思う。そして、日本もまた「人ごと」ではない。「安倍一強」政治のなかで、「もり・かけ疑惑」もなんのその、安倍政権の支持率は(メディアの「世論調査」によるかぎり)いまだ衰えていない。「安倍一強」とは、なんのことはない「安倍独裁」と同義である。それを「独裁」と言わずに、よりやわらかい印象を与える「一強」という言葉に置き換えて表現する日本のマス・メディアも、すでに「安倍独裁」に飲み込まれてしまっているのであろうか。

 ヨーロッパでは、ドイツやフランスはかろうじてなんとか踏みとどまっている感じだが、それでも両国とも極右勢力が急速に支持を拡大してきており、そのあおりでドイツでは、昨年9月の総選挙から3か月以上もの間政権協議が整わず、いまだに新政権の発足ができないでいる。そのほかのヨーロッパ諸国でも、極右勢力の台頭は無視できないものとなっており、オーストリアではすでに極右政党が政権の一翼を担ってさえいる。

 中国や北朝鮮は、もともと民主主義国家ではないから(それでも「朝鮮民主主義人民共和国」と称しているが)、これらの国で強権独裁体制が続いているのは不思議ではない。とはいうものの、中国では「習近平思想」が党規約に書き込まれ(前例は「毛沢東思想」のみ)、習近平の毛沢東並みの「神格化」が図られてその独裁権力がいっそう強固に確固たるものとされた。習近平が毛沢東と並ぶほどの傑出した「指導者」とは到底思えないのに、である。同様に、北朝鮮の金正恩も、人としてそしてまた政治指導者として、たとえば金日成に遠く及ばないと思われるのに、きわめて強力な独裁権力を振るっている。あるいは、ロシアではプーチンの権力独占が続き、独裁体制からなお抜けきれずにいる。

 日本やアメリカは、中国や北朝鮮やロシアとは違う、はずであった。しかし、いま、日本やアメリカの政治は、中国や北朝鮮やロシアと似たような状況になっている。決して傑出した政治指導者とは言えないような、むしろ政治指導者としての資質に欠けるとさえ言うべき人物がやりたい放題に権力を振るっている、という点においても、類似している。違うのは、そしてそのことが一番の重大問題なのだが、日本やアメリカの政治の独裁化は(ヨーロッパにおける極右勢力の台頭も同様に)、民主主義の結果としてもたらされた、ということである。民主主義の結果としての強権独裁政治—民主主義が民主主義を滅ぼす。1933年のドイツが、まさにそれであった。21世紀のいま、世界はそれと同じ轍を踏むことになるのだろうか。それとも民主主義の「力」が、みずからの滅亡を防ぐべく発揮されることになるのだろうか。2018年は、その分岐点となる年になるように思う。そして、日本国憲法の命運も、その延長線上にあると思うのである。



 

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