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浦部法穂の「憲法雑記帳」

 

第17回 「もう一人のファシスト」はいらない!


浦部法穂・法学館憲法研究所顧問
2017年10月25日

 前原誠司という人は、つくづく政治的センスのない政治家だと思う。かつて民主党政権下において国交大臣や外務大臣を務めたときの八ッ場ダム問題や尖閣諸島問題をめぐる対応のまずさで、すでにセンスの悪さは十分示されていたが、今回の総選挙直前の「希望の党」への合流は、まさに「極めつき」であった。「小池人気」に便乗して生き残りを図ろうとしたのだろうが、その読みも意図も、ありえない愚かさというほかない。その挙げ句が、10月22日の総選挙における自民党圧勝であった。もちろん、この選挙結果は、国民がそういう選択をした結果なのだから、前原氏の愚かさだけが招いた結果ではない。「森友」・「加計」の疑惑隠しのための解散であり、野党の準備が整わないうちにやってしまえという党利党略丸出しの解散であったことは明白だったのに(解散権の乱用!)、そしてなによりも、野党側が憲法53条の規定に基づいて要求していた臨時国会の召集に応じようとせず(憲法53条は「内閣は、その召集を決定しなければならない」と規定している!)、3ヶ月もたなざらしにした挙げ句に召集したと思ったら一切の審議もなしに冒頭解散という、まさしく憲法蹂躙・憲法違反の解散であったのに、そんな暴挙を働いた安倍政権に、それでも絶対安定多数の「お墨付き」を与えたのは、ほかならぬ「主権者国民」なのである。そう考えると心も萎えてくるが、ここは気を取り直して、この最悪の選挙結果を、無理にでも(?)プラス思考でとらえてみようと思う。

 まず、確実に言えることは、たしかに自民党は単独で6割超(284議席)という圧倒的多数の議席を獲得したが、それは国民の大多数が自民党=安倍政権を支持したことを意味していない、ということである。このことは、小選挙区制のもとでは常であり、あらためて指摘するまでもなかろう。今回の選挙でも、小選挙区においては、自民党は48%の得票率で75%の議席(218/289)を得ている。そして、各党の支持率をより正確に反映する比例区の得票でみてみると、自民党の得票率は33%にとどまる(2位は立憲民主党で20%)。つまり、今回の選挙で、自民党は投票者の3分の1の支持を得たに過ぎないのである(しかも、比例東海ブロックでは、本来立憲民主党が獲得するはずだった議席が、同党の候補者の数が足りなかったために自民党に譲り渡される結果となった。野党の準備が整わないうちに不意打ち的に解散すれば、こういう形で野党から議席を奪うことも可能になるのだ!)。決して、圧倒的多数の国民が自民党を支持したわけではないのである。ということは、じつは国民は安倍政権に「お墨付き」なんか与えなかったのである。

 では、今回の選挙で示された「民意」は何であったのか? 結論から言えば、私は、今回の選挙で国民は前原誠司・小池百合子両氏に「レッド・カード」を突きつけたのだと思う。「希望の党」などという、いかにも柔らかく優しそうな、しかし中身は何も見えない党名の裏に、安倍首相と同類の「もう一人のファシスト」が潜んでいることを、国民はしっかりと見抜いたのだと思う。そして、「小池×安倍」の対抗が、じつはファシスト同士の権力争いに過ぎないことも…。「もう一人のファシスト」はいらない! これが、今回の選挙で国民が示した意思なのだ、と私は思う。

 そして次は、「本丸のファシスト」に「レッド・カード」を突きつける番である。そのために、ということでいえば、前原氏の愚かな振る舞いの結果として「野党」というくくりのなかから「不純物」が除去できたことは、むしろよかったと思う。かつて私は、『憲法時評』の『「本物の野党」と「疑似野党」』と題した一文において、次のように述べた(2013年7月8日付)。

 『そもそも、いまの日本の政治は、「与党」・「野党」というくくりで何かを語れるような「まともな」政治ではない。「野党」とは、国語辞書では非政権党のことだとされているが、英語でいえばopposition partyである。つまり、単に政権に加わっていないというだけでなく、oppositionすなわち政権党の政策への明確な対抗軸をもっているのが、本物の「野党」なのである。しかし、いまの日本の「野党」は、政権に加わっていないというだけで決してoppositionとはいえないものが、うじゃうじゃしている。「与党」である自民党に対抗するのでなく、それを補完する「野党」が、いくつもうごめいているのである。(中略)………そのような「野党」は、非政権党ではあってもoppositionではなく、したがって本物の「野党」ではないのである。いまの日本では、そういう「擬似野党」が非政権党の相当数を占めている。そのような「擬似野党」が議席を伸ばしその結果として「自・公で過半数」に達しなかったとしても、それは「与党」自民党のやりたいことをより一層やりやすくするだけである。』

 民進党は(前身の民主党も)、「本物の野党」なのか「疑似野党」なのか、どっちつかずのよくわからない政党だった。だから、安倍政治・自民党政治に批判的な人も、民主党=民進党に託していいのかどうか、確信がもてなかったのである。この党の支持率が「じり貧」になっていったのは、そのためだったと思う。そういう状態から、今回、同党の「疑似野党」部分と「本物の野党」を目指す部分が袂を分かち、後者が国民に背を押される形で「立憲民主党」を立ち上げたことは、歓迎されるべきことであった。実際、総選挙の公示直前に立ち上げられた出来立てほやほやのこの党が、比例区では20%もの得票を得、小選挙区と合わせて55議席を獲得して、いきなり野党第一党になったのは、まさに国民が、どっちつかずではない「本物の野党」を求めていたからにほかならない、といえるのではないか。ここに、自民党圧勝という結果のなかにも、次への「希望」を見出すことができるのではないかと思うのである。

 「立憲民主党」が「本物の野党」として国民の支持を確固たるものにしていけるかどうか。これが、これからの大きな課題である。党勢拡大や「政権交代」を急ぐあまり数あわせに走って「風見鶏の吹きだまり」になってしまっては、元の木阿弥である。焦らず急がず、軸足をきちんと定めてぶれないことを、真に望む。そして、「本物の野党」として一貫した姿勢を貫きながらも幅広い国民の支持を得ることには困難を覚えている共産党や社民党が、ある程度に思い切った柔軟性を持って立憲民主党と協働できるなら、「本丸のファシスト」安倍政権に「レッド・カード」を突きつけることも、遠からず可能になると思う。



 

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