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浦部法穂の憲法時評

 

連立政権


浦部法穂・法学館憲法研究所顧問
2009年9月17日

 民主、社民、国民新3党の連立政権が発足した。圧倒的な議席数を誇る民主党との連立で、社民、国民新の極小議席政党が、はたしてどこまで存在意義を示せるかが、まずは注目される。自公政権下の公明党のように政権維持を第一義としてひたすら妥協を重ね、大政党にすり寄るばかりでは、連立の意味はない。逆に、民主党の側からいえば、国民の圧倒的支持があったのだからとばかりに、数にものをいわせてゴリ押しするようでは、なんのために連立を組んだのか、ということになろう。多数者はつねに少数意見に耳を傾け、可能なかぎりそれを反映させる、ということこそが、民主主義にとっては最も重要なのであり、巨大議席政党と極小議席政党との、この連立政権は、そういう「本物の民主主義」を実現させるものでなければならないと思う。

 さて、9月9日に3党の間で合意された「連立政権樹立に当たっての政策合意」は、大きく10項目を掲げているが、中身は、具体的なものから抽象的な方向性を述べるにとどまるものまで、さまざまである。まず全体像を把握するため、以下に10項目の項目タイトルだけを並べておく。

   1.速やかなインフルエンザ対策、災害対策、緊急雇用対策
   2.消費税率の据え置き
   3.郵政事業の抜本的見直し
   4.子育て、仕事と家庭の両立への支援
   5.年金・医療・介護など社会保障制度の充実
   6.雇用対策の強化―労働者派遣法の抜本改正―
   7.地域の活性化
   8.地球温暖化対策の推進
   9.自立した外交で、世界に貢献
  10.憲法

 ここでは全部を扱う余裕はないので、8〜10の項目だけをとりあげ、その政策の意味を考えてみたい。
 まず、地球温暖化対策の推進について、3党政策合意は、温暖化ガス抑制の国際的枠組みに主要排出国の参加を求め、政府の中期目標を見直す、などとする。CO2などの温室効果ガスの削減について、今年の6月に麻生内閣は「90年比8%減(05年比15%減)」という目標を示したが、民主党は「90年比25%減(05年比30%減)」を打ち出していた。日本の温暖化対応は、これまで、アメリカと同様にきわめて消極的であり、1997年の「京都議定書」以後も、排出量は増え続けている。こうした消極的な対応には、積極的な削減を進めている欧州諸国などを中心に、国際的な批判も強く、また、日本やアメリカが積極的な削減努力をしなければ、中国・インドなど途上国に削減を迫ることも難しい。その意味で、民主党の示した「25%減」という数字は評価できる。ただし、この民主党の削減目標に対しては、産業界から、大手の電力・鉄鋼・自動車業界などを中心に、労使一体となった反対の声が上がっている。こうした厳しい削減目標は産業と雇用に重大な影響を及ぼす、というわけである。地球温暖化が将来の世代に重大な損害を与えることが明らかにされているにもかかわらず、目先の自分たちの利益だけしか考えられないというのは困ったものだが、こうした労使一体の反対論を押さえて、どこまで政策を実現できるかが鍵となる。それとともに、3党合意には書かれていないが、民主党が選挙中に「目玉商品」の一つとして掲げていた高速道路無料化は、CO2を増加させるものでしかないことは明らかであるから、この連立政権の政策合意とは矛盾する。公共交通機関の収益が一層悪化して「交通弱者」の日常生活をさらに脅かすという問題もある。そういう愚策は速やかに引っ込めるべきである。

 つぎに、外交では、「緊密で対等な日米関係」、「沖縄県民の負担軽減」、「日米地位協定の改定を提起」、「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直し」といった文言が入れられていることに注目したい。米軍再編については、2006年に、普天間飛行場の名護市への移転、海兵隊のグァム移設などが日米間で合意されているが、民主党はかねてより普天間飛行場の国外・県外移転を主張してきた。また、地位協定については、米兵による犯罪事件が起こるたびに、その従属性が問題とされてきた。3党合意には具体的な方策や方向性についての記述はない。したがって、これらの問題にどれだけ本気で切り込むのかは定かでない。アメリカの政府筋からは、早くも「牽制」の発言が投げられており、岡田外相も外相内定直後から、普天間の国外・県外移転は民主党のマニフェストには書かれていない、などと「トーン・ダウン」している。アメリカとの交渉が簡単でないことはたしかであるとしても、言うべきことはきちんと言い、これまでのような、言われるままにお金も自衛隊も出すという追従外交から、対等な関係に立つ「自立した外交」に転換できるなら、この連立政権は「歴史的意義」の認められるものとなろう。地位協定や米軍基地問題は、今回の政権交代の意義を問う中心問題だと思う。

 最後に、憲法については、憲法の三原則の遵守など、ごくありきたりのことしか書かれていない。民主党内には「改憲=新憲法制定」論者も多い。この連立政権では、これはさしあたり「封印」ということなのであろうが、来年の参議院選挙で民主党が過半数を占めるようなことがあれば、「国民投票法」の施行と相まって、党内の「改憲」派の攻勢が強まるということも考えられる。ここは社民党のがんばりどころである。と同時に、私たちも、この点への警戒は怠らないでいる必要があろう。

 

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