2022年5月、日本国憲法は施行75年を迎えました。
各種雑誌がそれを記念し特集を組んでいますが、今回はそのなかの1つをご紹介します。
「憲法研究」は辻村みよ子先生による責任編集の下、2017年11月に創刊され、その後5月と11月を中心に年に2号ずつ発行されています。
創刊の辞で辻村先生は、内外の憲法を取り巻く状況について、「まさに今日、日本の平和主義や人権保障の真価がますます問われている」と記されています。
そして、そのような状況下において、「憲法70年の憲法理論と運用を総括し、変容する世界の憲法動向をふまえて、基礎原理論に切り込む憲法学研究の総合誌」を刊行する意気込みを語られています。
それから5年。本号と次号(第11号、2022年11月3日発行予定)において憲法判例理論に関する特集が組まれます。
本号では、人権判例理論を中心に、最新判例の動向・判例理論の展開・憲法理論的課題にもとづき問題提起を行うというスタイルがとられています。「単なる判例解説ではなく、一歩踏み込んだ、憲法判例理論の研究」が目指されています。
本号では下記18論稿のほか投稿論文4本に加え、憲法年表(2021年10月1日~2022年3月31日までの、政治・社会の動きと憲法・判例の動きを対比させたもの)などが掲載されています。
なお、次号(第11号)では、参政権・選挙・代表、権力分立と統治機構がテーマとして取り上げられるようです。
なお、本号と次号の主な読者対象として、憲法研究者や学生を想定しているとのことですが、広く憲法問題に関心のある方々の知的好奇心をくすぐるものだと思いますので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
目次
◆1 判例理論の展開と最高裁判所裁判官〔市川正人〕
◆2 憲法判例における比較衡量諭の諸相―法令の違憲審査から視点を移して〔渡辺康行〕
◆3 憲法上の権利総論:権利主体論の展開と個人の多様性―生殖関係なき異性カップルと同性カップルとの婚姻における不平等を素材に〔木村草太〕
◆4 「外国人」の人権享有主体性〔館田晶子
◆5 憲法の私人間効力論の再構成―「私人間」適用から法律解釈の統制へ〔西村枝美〕
◆6 判例から見るプライバシー権とその再構成〔音無知展〕
◆7 夫婦同氏制の憲法24条適合性審査に関する覚書〔佐々木くみ〕
◆8 家族制度およびリプロダクティヴライツに関する判例の動向〔武田万里子〕
◆9 「君が代」起立斉唱拒否事件判決に見る多数者の論理と面従腹背の倫理〔金井光生〕
◆10 孔子廟違憲判決〔赤坂正浩〕
◆11 表現の自由と人格権の諸相―その現代的課題に向けて〔志田陽子〕
◆12 NHKと放送の自由〔齊藤 愛〕
◆13 監視社会と表現の自由〔塚田哲之〕
◆14 集会の自由と公共施設の「公共性」〔江原勝行〕
◆15 経済的権利に関する判例の敬譲的判断の意味〔多田一路〕
◆16 刑事手続・身体の自由:技術的手段を用いた捜査活動の法的問題〔實原隆志〕
◆17 社会権判例理論の課題と展望〔遠藤美奈〕
◆18 憲法訴訟と憲法的紛争の関わり―受益権分野を例にして〔青井未帆〕
〈投稿論文〉略
【書籍情報】2022年5月、信山社が発行する雑誌『憲法研究第10号』2022年5月の特集。辻村みよ子(東北大学名誉教授)責任編集。定価は4,180円(本体価格3,800円)。
【関連HP:今週の一言・書籍・文献】