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憲法関連書籍・文献紹介
書籍『憲法政治 ―「護憲か改憲か」を超えて』
S.K



 憲法政治とは、一筋縄ではいかない相互作用のダイナミズムが働いている「憲法をめぐる政治」、あるいは「憲法を取り扱う政治」のこと。本書は、日本経済新聞の政治部・経済部の記者として経験を積んだ著者が、直近10年の憲法政治の最も重大な局面である「憲法改正」をめぐる現実政治の潮流と統治構造の改革論を、緻密な取材と最新の憲法理論をふまえて、重層的に描いたドキュメントです。
 タイトルにもあるように、本書は従来の「護憲か改憲か」という二項対立を超えて、「憲法論議の新たな地平」を拓くという立ち位置です。
 2012年12月に再登板した安倍晋三首相は、憲政史上最長の7年8か月にわたり、「憲法改正」の悲願を成し遂げようとしていましたが、「安倍一強」とも呼ばれる強い政権基盤をもってしても「憲法改正」は全く進みませんでした。本書ではこの「目まぐるしくターゲットを変え、焦点が定まらなかった」安倍流改憲を丁寧に追い、その失敗の本質を探ります。
 改憲議論が進まない一因としては、改憲原案の発議を国会の専権事項と自負するあまり、与野党を超えて内閣と行政府を改憲議論から排除する「政治家主導」の慣行が改憲議論の貧困を招いてきたことなどが指摘されています。
 第7章では、緊急事態条項の再燃、感染症対策で「法の支配」が置き去りとなったこと、オンライン国会、学術会議問題、国民民主党の21世紀の国家目標をうたう「憲法改正に向けた論点整理」、デジタルと憲法の課題など、2020年から2021年における憲法政治の潮流が学者の見解を紹介しつつ描かれています。
 終章ではまず(1)憲法議論を「政治家の専権」にせず、国会等に「専門家会議」を置いて衆知を結集する。(2)国会は改憲原案の審議の前に、「衆参両院合同審査会」で大枠の事前調査を推進する。(3)改憲は九条や人権より、世論の分断を招きにくい「統治構造改革2.0」を優先する、という著者の「憲法改正論議の三原則」が提示されています。
 憲法改正の難しさの深層を考察し、「与党・官僚内閣制」から「議院内閣制」に一元化した立憲的再編である「平成のデモクラシー」の全体像を検証した上で、法の支配など立憲主義の視点を強めて「改革の不足」に踏み込む「令和の統治構造改革2.0」の中で憲法改正を問い直すべきことを提案しています。
 憲法付属法を含めた「実質的意味の憲法」を俯瞰し、専門知を集めて改革構想を練るという憲法政治の流儀を提示する書です。
これから憲法改正を考える上で、一助となる一冊ではないでしょうか。

目次
序 「憲法を巡る政治」の一〇年
第1章 改憲が自己目的化する力学 2012~2013
第2章 集団的自衛権と憲法九条 2013~2015
第3章 象徴天皇と「アベ政治」 2015~2016
第4章 首相が改憲を提案するとき 2016~2017
第5章 「自衛隊明記」へ自民攻防 2017~2018
第6章 「中山ルール」の重みと限界 2018~2019
第7章 コロナとデジタル「新しい中世」 2020~2021
終章 憲法改正論議の三原則

【書籍情報】2022年1月、ちくま新書。著者は清水真人(日本経済新聞編集委員)。定価は1,034円(本体価格940円)。

 

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