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憲法関連書籍・文献紹介
書籍『国際水準の人権保障システムを日本に 個人通報制度と国内人権機関の実現を目指して』
S・K

 本書のサブタイトルにある「個人通報制度」とは国際人権条約で保障された権利を侵害されたものが、国内の裁判などの救済手段を尽くしても権利が回復されない場合に、条約機関に直接救済の申し立てができる手続きを言います。(本書3頁)
 日本は個人通報制度が定められている8つの国際人権条約(自由権規約、社会権規約、人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、拷問等禁止条約、子どもの権利条約、障害者権利条約、強制失踪条約)を批准しています。これらは誠実に順守される必要がありますが(憲法98条2項)、日本では個人通報制度が導入されていないので、権利を実現する手段がない現状にあります。個人通報制度は、既に約150か国において何らかの形で導入されており、また、日本は各条約機関から何度も導入の勧告を受け、さらに、国連人権理事会のUPR審査においても多数の国から勧告を受け、2018年3月に「フォローアップすることを受け入れる」と回答しているにもかかわらず、いまだ全く整備されていない状況にあります。
 また、「国内人権機関」とは、人権の保障と促進のために設置される国家機関であり、その国に居住するものであれば国籍の有無にかかわらず、侵害された人権の回復を求めていくことのできる公的機関です(本書3頁)。その任命手続、権限、構成及び財政等において政府から独立した人権救済機関であるべきとされています。この制度も、いまでは120を超える国と地域で設置されるに至っていますが、日本では導入されていません。
 これらの制度は、人権保障のために欠かせない極めて重要な制度であり、日本が現在抱えている多様な人権諸問題の有効な解決策となりうると考えられます。
 本書は、2019年10月、徳島県で開催された日本弁護士連合会主催の第62回人権擁護大会にて開催されたシンポジウムの内容に、同シンポジウムに向けて英知を結集して作成した「基調報告書」※のエッセンスを取り入れて書籍化されたものです。2つの人権保障システムの内容や、導入された場合の効果、導入に向けた現状と課題などが事例に即してわかりやすく解説されています。
 本書の第3章には、シンポジウムのうち特に反響の大きかったプログラムが収載されています。日本の人権の被害実態(障がい者差別、女性差別、学校いじめ問題、入管・難民問題、ヘイトスピーチ)の報告や、最高裁裁判官を務めた経験から個人通報制度と国際人権機関の必要性を語った泉徳治氏のビデオレター、海外調査報告、韓国で国内人権機関が人権救済に大きな役割を果たしているという韓国国家人権委員会前事務総長の講演、これらを踏まえたパネルディスカッションが収載されており、充実した内容になっています。
 まだ、日本においては、個人通報制度も国内人権機関も知る人は少ないですが、本書をきっかけに、これらの制度の重要性が周知され、導入への議論が加速することを願います。

目次
発刊にあたって
個人通報制度の導入と国内人権機関の設置を求める決議(2019/10/4日本弁護士連合会)
第1章 はじめに
第2章 個人通報制度と国内人権機関
 第1節 個人通報制度
 第2節 国内人権機関
第3章 国際水準の人権保障システムの実現に向けて
     ―日本弁護士連合会第62回人権擁護大会シンポジウム第2分科会報告
 第1節 日本の人権状況
 第2節 ビデオレター「国際人権条約の重要性」泉徳治(元最高裁判所判事、弁護士)
 第3節 海外調査報告
 第4節 講演「大韓民国国家人権委員会の役割と現状」チョヨンソン(韓国国家人権委員会前事務総長)
 第5節 パネルディスカッション「人権が守られる国、日本をめざして」
おわりに
資料編
市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)条約本文
市民的及び政治的権利に関する国際規約の選択議定書(第一選択議定書)
人権委員会設置法案
人権擁護委員法の一部を改正する法律案

※「第62回人権擁護大会シンポジウム第2分科会基調報告書」は、日本弁護士連合会HPに全文掲載されています。

【書籍情報】2020年12月。明石書店。日本弁護士連合会第62回人権擁護大会シンポジウム第2分科会実行委員編。定価3000円+税。


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