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憲法関連論文・書籍情報
書籍『AIと社会と法―パラダイムシフトは起きるか?』
T.M

 AI(artificial intelligence:人工知能)の進展・普及が法や社会に与えるインパクトについて、とくに2000年代以降盛んに学際的な議論がなされており、論考の蓄積もあります。本書もその潮流に位置づけられますが、より踏み込んだ各論について複眼的に学ぶことができる点が特徴です。
 本書は『論究ジュリスト』25号から33号(2018~2020年)に連載された、全9回におよぶ研究会「AIと社会と法」の座談会をまとめ、これに加えて企画全体を振り返る第10章が収録された一冊です(「はしがき」参照)。メンバーは基礎法、私法、公法研究者と、工学者がコアメンバーとして進行の中核を担い(本書編者の4名)、各テーマに応じて外部の識者が2名招かれています。「AIと法の関係を考えるということは、テクノロジーと法、あるいは法学との対話が可能か、またそれが生産的なものであるためにはどうしたらよいのかという大きな難題を抱えている」ことを意味する(4頁)という問題意識に従い、私たちの日常に潜伏するAIと社会と法の関係、在り方の問題について上記メンバーらによって活発な議論が展開されるのが本書の魅力の一つです。
 たとえば、「AIやロボットの普及により労働が代替され、人間の仕事がなくなる」という言説について、そもそもそういった事態は生じうるのか、生じるとして、その場合に求められるべき一種の社会正義はいかなる輪郭をとるのか、当該「正義」を担保する労働法や社会保障法はこれまでの前提に変容を迫られるのか等が議論されています(第7章)。その他、現段階では喫緊の課題には至っていないものの、自律生成型のAIが登場したとして、当該AIが自らの学習にしたがって作品を創出した場合、著作権をめぐる法益はダレに帰属するのかなど、長期的な展望を視野にいれたアクチュアルな問題も取り扱われています(第6章)。自身の関心のある章(テーマ)に沿って読み進めることもおすすめです。
 AIの進展・普及に伴い、法や社会が当然視してきた大前提は確実に一定の変容を迫られ得る一方で、しかし、私たちの社会がすべて非人間化され、世界観が一掃されるわけでも決してありません。常に更新されるこの境界のとるべき姿を見定めるにあたり、本書は大いに参考になります。

はしがき
第1章 テクノロジーと法の対話
第2章 データの流通取引―主体と利活用
第3章 契約と取引の未来―スマートコントラクトとブロックチェーン
第4章 医療支援
第5章 専門家責任
第6章 著作権
第7章 代替性―AI・ロボットは労働を代替するか?
第8章 サイバーセキュリティ
第9章 フェイクとリアル―個人と情報のアイデンティフィケーション
第10章 これからのAIと社会と法―パラダイムシフトは起きるか?

【書籍情報】2020年8月、有斐閣。編者は宍戸常寿、大屋雄裕、小塚荘一郎、佐藤一郎。定価は3400円+税。

【関連HP:今週の一言・書籍・論文】

書籍『AIと憲法』


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