警察庁・内閣府の自殺統計によると、「勤務問題」が原因・動機の自殺数は毎年約2000人。つまり、1日に約5人が仕事を原因・動機に自殺しています。脳・心臓疾患、呼吸器疾患などの実態も考慮すると、過労死の件数はおそらく年間5000件から1万件と推定されています。
本書は、中学・高校・大学生向けに、過労死の実態、過労死や長時間労働をなくすための提言、ワークルール(労働法)などがとてもわかりやすく解説されています。
11月は過労死等防止啓発月間です。未来ある若者が本書をきっかけに過労死や長時間労働について学び、労働により健康を損なうことなく、幸せのために働き、充実した人生を送ることを切に願います。
第1章では、未来ある若者の尊い命が奪われた5つの事例と中高年労働者の命が奪われた5つの事例が紹介されています。若者の過労死の背景としては、バブル経済崩壊後の人員削減と少子高齢化が若年労働者に過度な負担をかけていること、労働組合の弱体化が指摘されています。また、中高年労働者の過労死をなくすための総合的な労働政策改善の必要性も述べられています。
第2章では、過労死を生み出す社会全体の意識や構造的な問題を指摘し、過労死や長時間労働をなくすための提言をしています。
第3章では、社会の中で理不尽なことが行われる場合に備え、自分を守るために知っておくべきワークルールがQ&A形式でわかりやすく解説されています。
目次
第1章 生きることと働くこと
1 過労死とは
2 若者の過労死
3 中高年の過労死
第2章 健康な社会をつくるために
1 いのちと健康を第一とする価値観を
2 業務量を調整し、必要な人員配置を行う
3 過度な注文と過剰サービスのスパイラルを是正する
4 公務員は働きすぎでもよいのか
5 職場のハラスメントをなくす
6 健康な職場をつくり健全な会社経営を
7 労働についての学び
第3章 健康に働くためのワークルール
参考文献
『過労死ゼロの社会を―高橋まつりさんはなぜ亡くなったのか』高橋-幸美・川人博(2017年刊、連合出版)
『過労自殺 第二版』川人博(2014年刊、岩波新書)
『就活前に読む―会社の現実とワークルール』宮里-邦雄・川人博・井上幸夫(2011年、旬報社)
『まんがでゼロからわかる ブラック企業とのたたかい方』佐々木亮・大久保修一・重松延寿(2018年、旬報社)
『労働法はぼくらの味方!』笹山-尚人(2009年、岩波ジュニア新書)
【書籍情報】2020年9月、岩波ジュニア新書。著者は川人博。定価は800円+税。
【関連HP:今週の一言・書籍・論文】
今週の一言
過労事故死をなくすために
川岸卓哉さん(弁護士)