日本は今年敗戦から75年を迎えます。
戦争を知らない私たちに戦争体験者が語ってくれた当時の記憶は、「戦争は怖いもの」、「嫌なもの」、「絶対に避けるべきもの」という感覚として心深くに何十年も残り続けています。しかし、戦争の記憶を伝えることができる人は年々少なくなり、記憶の伝承が困難になっています。記憶として伝えるべきものが単なる事実の記録の伝承に過ぎなくなると、事実が都合よく解釈されてしまったり、事実の真偽が争点となってしまうなど、戦争を繰り返さないために本当に伝承すべきことが伝承されなくなってしまいます。
ドローン兵器やサイバー攻撃が現実のものとなり、今後さらにバーチャルとリアルの区別がつきにくい世界で生きていくこどもたちに「戦争は怖いもの」、「嫌なもの」、「絶対に避けるべきもの」という感覚を伝えていくことは喫緊の課題でもあります。
この絵本は、洗練されたシンプルな文と絵が、こども目線で平和と戦争の日常を対比して描き、敵も味方も同じ人間なのだということを感覚的に伝える絵本です。解説は一切ありませんが、未就学児が「戦争はいやだね。平和がいいね」と感じられる1冊です。
平和や戦争の話題が多くなる時期ですので、小さなお子さんにはこの絵本をきっかけに話してみてはいかがでしょうか。
【書籍情報】2019年3月、ブロンズ新社。文は谷川俊太郎、絵はNoritake。定価は1,200円+税。