日韓関係は、「慰安婦」問題、元徴用工の賠償請求を認めた韓国大法院(最高裁)判決、レーダー照射問題など多くの対立を抱えています。本特集の中心テーマの元徴用工の賠償請求判決について、本稿で、梓澤和幸弁護士は「日本の政治家、マスメディアの反応に『どこか違う』という違和感を覚えた」といいます。安倍政権は「解決済み」として、判決や韓国政府を批判し、仲介手続きや国際司法裁判所へ提訴すべきとの意見も出ています。韓国・文在寅政権は、三権分立発言をし、対応策を打ち出せないでいます。
このような状況を反映してか、世論調査で、「『徴用工』判決『納得せず』69% NHK世論調査2018,11,13」「日本政府の対応を、支持しますか、支持しませんか。・支持する(86%)読売新聞2018,12,17」となっています。
本特集は、世論調査の前提であるべき情報が正しく国民に伝えられていないことを明らかにしています。「個人の請求権を消滅させるものではない」ことをキーワードに、日本の朝鮮半島の植民地支配の歴史、朝鮮戦争、冷戦下での日韓条約、数々の戦後補償裁判などを解説しています。
あわせて、「慰安婦」問題の日韓合意までの経緯、その問題点、事実関係が整理され、日韓関係の実態を冷静に見て、友好関係を構築すべきことを記しています。
構成は以下の通りです。
◆特集企画にあたって 「法と民主主義」編集委員会・澤藤統一郎(弁護士)
◆日・朝・韓関係の戦後史と現状 和田春樹(東京大学名誉教授)
◆日韓の戦後処理の全体像と問題点 山本晴太(弁護士)
◆中国人強制連行強制労働事件の解決事例と韓国徴用工問題解決への展望 森田太三(弁護士)
◆韓国徴用工裁判の経緯、判決の概要と今後の取り組みについて 川上詩朗(弁護士)
◆徴用工判決と金景錫事件 梓澤和幸(弁護士)
◆日韓合意の破綻 ・・・・「慰安婦」問題と日韓関係 大森典子(弁護士)
◆韓国の側から見た日韓関係の現状と提言 李洪千(東京都市大学准教授)
【書籍情報】日本民主法律家協会が発行する雑誌『法と民主主義』2019年4月号の特集。定価は1000円+税。
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強制動員による人権侵害の被害は回復されなければならない