本書は若手憲法研究者の共著による憲法学の入門書です。
特徴は「第1に、本書の主役は文章ではなく、写真や図表などの視覚的なコンテンツで」「第2に、本書は単なる資料集でなく、資料集と教科書の「いいとこととり」をテキストで」「第3に、本書の執筆者はほとんどが30代前半の若手」です。
憲法の歴史から始まり、歴史的憲法裁判や事件と関連づけて、憲法をわかりやすく解説し、理解を深めるための当時の時代状況や争点、それを示す写真や図解や統計データが各項目ごとに主役として散りばめられています。
写真では、紀元前2000年のハンムラビ法典から2018年の時事までさまざまな報道写真などがふんだんに掲載されています。日本国憲法に男女平等を入れようとした、ベアテ・シロタ・ゴードン氏の草案や世田谷区の「パートナーシップ宣誓書 受領書」の写真など、興味をそそるものが多くあります。
生存権裁判や教科書検定や自衛隊違憲訴訟、議員定数不均衡訴訟など時代の変化の中で多くの憲法判例が解説されています。職業選択の自由を規制する法律などの合違憲性については時代状況により憲法判断が変わってくることを解説しています。
また、統治機構については、「国や制度のしくみとはたらきを簡潔に伝えるチャート図」も理解を深めます。各ページの下段には○×問題があり、理解度を確められます。また、索引があり、興味のある事柄から読むことができます。
構成は以下の通りです。
1 憲法とは何か
2 人権の射程
3 新しい人権
4 法の下の平等
5 思想・良心の自由
6 信教の自由
7 表現の自由・総論
8 表現の自由・各論
9 集会・結社の自由
10 学問の自由と大学の自治
11 職業選択の自由
12 財産権
13 生存権
14 教育を受ける権利
15 勤労の権利・労働基本権
16 参政権と選挙制度
17 刑事手続上の権利
18 統治機構・総論
19 国会
20 議院と議員
21 内閣
22 行政
23 裁判所
24 司法権と憲法訴訟
25 地方自治
26 財政
27 天皇
28 平和主義
29 日本憲法史
30 憲法改正
【○×問題の解説・索引・日本国憲法(全文)】
【書籍情報】2018年12月、弘文堂。編者は斎藤一久・堀口悟郎。定価は2300円+税。
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