安倍政権は今般の安保法案の成立を目指し、国会の会期を大幅に延長しました。しかし、憲法学者からこの法案は違憲だと断じられ、国民の反発も強まっています。
こうした折に、この安保法案の問題点と危険性を全面的に、かつ理論的に解明するのが本書です。著者の山内敏弘教授は、この安保法案、そしてその元となった閣議決定(2014年7月1日)、それを導いた安保法制懇報告書(2014年5月15日)それぞれについて、それらがいかに憲法の規定と解釈に照らして問題であるかを、精緻に分析しています。今後の国会での審議に際して論点とされるべきことが網羅的に記載されています。
この本の帯には「歴史的岐路に立つ私たちへの著者渾身の警鐘」とあります。そこには山内教授の憲法学者としての矜持を感じます。
本書には安保法案の考え方に通じる自民党の改憲草案(2012年)や、安保法案との関連で把握されるべき特定秘密保護法案についての論稿も収載されています。また、真に求められる安全保障への課題として「東アジアにおける平和の条件と課題」(第6章)を提言しています。「むすび」は「平和憲法の普遍的意義を思う」です。
【書籍情報】
2015年7月、法律文化社から刊行。著者は山内敏弘氏(一橋大学名誉教授)。定価は本体4000円+税)。
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