安倍政権が集団的自衛権行使に踏み出そうとする中、90年の歴史をもつ法律家団体である自由法曹団は、国際法と憲法の基本理念を学ぶため、2014年9月29日には国際法学者の松井芳郎先生を、同年10月6日には憲法学者の森英樹先生を招いた講演会を行いました。
本書は、その時の講演録をまとめたブックレットです。平和を守る国を作る行動の力となることを願って作成されただけあり、重要なポイントが非常にわかりやすく簡潔にまとめられています。
巻頭には、安倍首相のパネル答弁の理論的批判や、日本の青年を戦争疲れのアメリカ兵の代替要員として戦場に送るのが集団的自衛権だということなどが、「名探偵9条くんの推理」という1ページ漫画で表現されているなど、気軽に読めるよう工夫されています。
第1章では、国際法学から見た集団的自衛権ということで、1919年の国際連盟規約で戦争が違法化されたことから違法性阻却事由として自衛権が誕生したこと、国連憲章では、武力行使禁止が原則であって、自衛権は例外的に厳格な要件でのみ認められる違法性阻却事由であること、国際社会では「武力攻撃の発生」「必要性」「均衡性」と要件が厳格化されてきているにもかかわらず日本は逆行していること、集団的自衛権の解釈、国連安全保障体制の中での位置づけ、ICJの役割、閣議決定の手法批判、テロをはじめとする国際法の問題点などなどが、15個のクエスチョンでまとめられています。
第2章は、憲法学から見た集団的自衛権ということで、憲法9条の制度趣旨から、戦後解釈改憲、2014年の解釈改憲の憲法学上の評価、7月1日の閣議決定の意味、具体的な変更点、問題点、日米安保条約と集団的自衛権の関係、「戦後レジームからの脱却」路線、極めてきな臭い「積極的平和主義」路線が、国際的孤立を招いていること、運動の中での専守防衛論をどのように捉えるかなどが、ズバッと核心をついた、わかりやすい例で面白く解説されており、大変読みやすいものになっています。
参考資料を含めて80ページのブックレットですが、集団的自衛権の本質がよくわかるものになっていますので、平和を希求する多くの人々の手に渡り、力強い運動の原動力になればと思います。
【書籍情報】
2015年5月、清風堂書店から刊行。著者は、松井芳郎・名古屋大学名誉教授、森英樹・名古屋大学名誉教授。編集は自由法曹団大阪支部。定価648円+税。
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