安倍政権による集団的自衛権行使容認の閣議決定(2014年7月1日)の危険性について警鐘を鳴らす本は数多くありますが、本書はそれを深く、そして説得的に抉り出し、そして、安全保障ということを掘り下げながら考えさせてくれます。
本書は集団的自衛権について提言した安保法制懇(首相の私的諮問機関)報告書の内容の欺瞞性を明らかにしています。そこには胸のすくような見事な批判が多くあります。そして、その報告の背景にある国際情勢認識の特異性を暴いています。「ミサイル攻撃」論、「尖閣問題」などについて考える基本的な前提や視座を提供してくれています。その上で、安倍首相はその歴史認識ゆえに国際社会との矛盾に直面していく可能性に言及しています。これもなるほどと思わせてくれます。
軍事、しかも古いタイプの戦争を想定した軍事に偏重した安全保障認識の転換を呼びかけていることも本書の特長です。いまの時代を生きる者と地球に立ちはだかるもの、いまこそ真剣に向き合わなければならない人類的課題、などを考え、集団的自衛権の問題もそのような視点から根本的に考え直してみる必要性を感じさせてくれます。
【書籍情報】
2014年7月、岩波書店から岩波新書として刊行。著者は豊下楢彦・元関西学院大学教授(国際政治論)と古関彰一・獨協大学名誉教授(憲法史)。定価は本体820円+税。
<法学館憲法研究所事務局から>
1月31日、当研究所は公開研究会「集団的自衛権の違憲性」を開催します。こちら。今年の国会で集団的自衛権が法律として具体化されようとしています。いまこそ市民が声をあげる時となっています。その課題を考える機会ですのでご案内します。
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