2008年に開催された9条世界会議にはのべ2万人を超える人たちが参加しました。海外からの参加者は、41カ国・地域から150名以上にのぼりました。日本国憲法9条にいかに多くの内外の人々が関心を寄せているのかが証明されました。
この報告は、9条世界会議の中の一つの企画として開催されたシンポジウムの内容で、シンポジウムでコーディネーターをつとめた権赫泰教授(韓国・聖公会大学)がとりまとめました。
権教授は、日本国憲法9条を論じる際には3つのレベルがある、つまり、第一は規範として、第二は歴史認識の問題として、第三は安全保障の問題として、評価・分析されるべきと整理・問題提起し、シンポジウムのパネリストの発言を紹介しています。
シンポジウムでは、日本国憲法9条の存在は規範として国際的な意義があり、各国の平和を求めるたたかいを励ますものとなっていることが語られました。一方で、日本の平和憲法が生まれた背景にある、日本のアジア侵略への反省が徹底されなければならないという発言もありました。さらに、日本がアメリカとの安保体制に深く組み込まれ、平和主義が形骸化していることは問われなければならない、という発言もありました。ドイツ、中国、台湾、アメリカ、フィリピンなどからのコーディネーター・パネリストのこうした発言は、改憲問題が現実的な政治課題になりつつあるいま、日本人への鋭い問題提起といえるでしょう。
この報告は『9条世界会議の記録』(2008年、大月書店)に収録されています。
<法学館憲法研究所事務局から>
当研究所は5月27日(月)に、権赫泰先生講演会「日本の改憲問題と日韓関係」を開催します。権赫泰先生が今般の日本での改憲の動きをどう分析されるか、注目されます。多くの方々にご参加いただきたく、ご案内します。
権赫泰先生の論文としては下記もあります。
論文「周辺国から問う、改憲と歴史認識」
論文「『平和憲法体制』とアジア」
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