2009年、ソマリア沖の海賊に対処するとして、海賊対処法が制定されました。そこには、海賊への対処のためには海上保安庁とあわせて自衛隊の派遣もすすめることも盛り込まれました。
村井敏邦教授はこの講演で、海賊への対処にあらつ際の海上保安庁と自衛隊の指揮権の問題、海賊対処法の刑事法の原則から生じる疑義、などを条文に則して分析し、それらが憲法上も問題になることを解明しています。村井教授は刑事法の専門家ですが、その研究は憲法理念にもとづくものであり、そこに村井教授の真骨頂があると言えるでしょう。この講演も、まさにその立場に貫かれたものです。
昨今、日本社会の「安心・安全」が脅かされているとして治安対策が強化されてきています。村井教授はこの講演で、それが警察力の強化と自衛隊の活動範囲の広がりに結びついてきていることの危険性を歴史的に解明しています。
この講演録は「法学館憲法研究所報」第2号に収載されています。
<法学館憲法研究所事務局から>
法学館憲法研究所は10月8日(月・祝)に「裁判と憲法 −裁判員制度・死刑制度を考える」を開催します。村井敏邦教授が講演し、その後浦部法穂・法学館憲法研究所顧問(=神戸大学名誉教授)と対談します。詳細はこちらからご確認ください。
この間民主党が政権の座につきましたが、裁判員制度や死刑制度の問題はほとんど進展していません。あらためて国民が学び、声をあげていくべき時期です。刑事法と憲法の基本理念から裁判員制度と死刑制度を学び考える機会になります。多くの方々のご参加をお待ちしています。
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