北朝鮮や中国の動きを警戒する必要があるとして、アメリカ・韓国との合同演習に自衛隊が参加しています。戦地イラクにまで派遣されるようになった自衛隊が、その戦闘準備を着々と進めているようです。この自衛隊をめぐる状況と問題点を様々な取材を通して浮き彫りにする書です。
第1章「イラク派遣隊員の証言」は、どのような経緯で派遣されることになったのか、実際に派遣されてどうだったのか、など自衛隊員の生の声が紹介されています。第2章「経済的徴兵制がしのびよる」は、貧困な生活を余儀なくされている家庭の子どもたちが自衛隊に入隊していっている、そのリアルな状況を明らかにしています。第3章「『戦える』隊員づくり」は、実際に「敵」と戦える自衛官をつくるための思想・精神づくりなどを紹介しています。第4章「リクルート大作戦 −学校と自治体を組み込んで」は、自衛隊が学校・自治体との連携強化に邁進している様子を描いています。そして、第5章「真に何を『守る』のか」で、こうした自衛隊をめぐる状況とその変化が何を意味するのかを問うています。
3.11での自衛隊の救助活動を多くの人が賞賛していること、自衛隊が若者の重要な就職先の一つとなりつつあること、などの状況の中で、自衛隊というものをあらためてどう考えるのか、この本を読みながら多くの人々との議論を広げなければならないと思いました。
【書籍情報】
2012年7月、かもがわ出版から刊行。著者はジャーナリスト・布施祐仁さん。定価は本体1,500円+税。
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