「法学館憲法研究所報」第5号の巻頭言で、法学館憲法研究所・浦部法穂顧問の論稿です。
東日本大震災という大規模な自然災害に遭遇することになった人類が、今後自然とどう向き合うのか、原子力への依存を強めてきたエネルギー政策をどう転換し、大量の電力を使ってきた生活と産業をどうしていくのか、等々、いまが人類史的局面に至っているのかもしれないと問題提起しています。続いて、憲法というものを生み発展させてきた人類史をたどりながら、東日本大震災を機に、憲法と立憲主義の考え方を否定する言説が飛び交うようになってきていることを警告します。すなわち、一部の国会議員などが、大震災などの非常事態時には憲法を停止して超憲法的な緊急措置がとれるようにすべき、というようなことを唱えていることに対して、その危険性を明らかにしています。
そして、大震災からの復興の原理原則も日本国憲法の中に見出されることを説きます。それは、「個人の尊重」が日本国憲法の基底的原理であるとし、被災者の住まいと仕事(生活維持手段)の確保までは、最低限政府の責任としてきちんとやられるべき、ということを明確に唱えるものとなっています。
<法学館憲法研究所事務局から>
11月3日(木・祝)、シンポジウム「震災と憲法」(PDF)で浦部法穂・法学館憲法研究所顧問が「被災者支援と震災復興の憲法論」と題して講演します。被災者の住まいと仕事を政府の責任で確保するよう、その基本的な考え方などを語り合います。多くの方々にご参加いただきたいと思います。
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