戦後の日本のあり方に圧倒的な影響力を及ぼした米国は、敗戦直後からマッカーサーを中心とするGHQを通じて日本を支配しましたが、その裏では米国情報機関が動いていました。その実態は、当事者やジャーナリストなどが著書であきらかにしていますが、2000年代になって公開されたCIA文書によって、いろいろな事実が裏付けられました。 本書では4つの事柄が著わされていますが、第三章の「野村吉三郎と『日本海軍』再検計画」では、自衛隊の成り立ちに裏で動いた日本と米国の政治家や情報機関の人々が描かれていて、その連携や確執の模様には、興味深いものがあります。戦後の日本に米国の情報機関がこれほど影響を及ぼしているたことは問題視されるべきです。 米国では、この書の情報源になったCIA文書が公開されていますが、著者が指摘しているように、公開する範囲は米国の国益にいちじるしく反しないことが前提になっていることを忘れてはなりません。一方で、米国の公文書公開制度に比べて、日本の制度はどうなのかも考えさせられます。 【書籍情報】 有馬哲夫著 平凡社 2010年6月刊行 定価:本体760円(税別) *戦後日本がアメリカの世界戦略に組み込まれてきた経過などは、当研究所が製作に協力したドキュメンタリー映画「戦争をしない国 日本」などにも描かれています。あらためてご案内します。
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