朝日新聞が2009年4月18日から19日にかけて、憲法世論調査を行ないました。(数字は%。小数点以下は四捨五入。質問文と回答は一部省略。◆は全員への質問。◇は枝分かれ質問で該当する回答者の中での比率。〈 〉内の数字は全体に対する比率。丸カッコ内の数字は、2008年4月19、20日の調査の結果)
そこから抜粋で引用します(筆者、下線追加)。
◆憲法は9条で「戦争を放棄し、戦力を持たない」と定めています。あなたは、憲法9条を変える方がよいと思いますか。変えない方がよいと思いますか。
変える方がよい 26(23)
変えない方がよい 64(66)
◇「変える方がよい」と答えた26%の人に「では、憲法9条をどのように変えるのがよいと思いますか」(択一)
いまある自衛隊の存在を書き込むのにとどめる 50〈13〉
自衛隊をほかの国のような軍隊と定める 44〈11〉
◆これからの自衛隊の海外活動についてうかがいます。自衛隊の活動はどこまで認められるかについて、あなたの考えは、次の中ではどれに一番近いですか。(択一)
海外での活動は一切認めない 9(15)
武力行使をしなければ、海外での活動を認める 56(64)
必要なら武力行使も認める 32(17)
注目したいのが、下線の部分です。
この「いまある自衛隊の存在を書き込むのにとどめる」という選択です。これは言外に自衛隊がこれ以上、大きくなったり、攻撃的になることには賛成しないと理解できると思います。また、その前段の質問の回答「変えない方がよい」も、自衛隊の存在を認めている人も、9条を変えるとますます自衛隊が大きくなるので、歯止めとして9条をみていると理解できるのではないでしょうか。また、「武力行使をしなければ、海外での活動を認める」ことに前回調査より減ったとはいえ、全体の56%が支持しています。
つまり、自衛隊が現状のままで、「武力行使」しなければ、海外活動を認めるということに賛成意見が多いことが示されています(「必要なら武力行使も認める」が増加したことは別途、論じたい)。
本書は、自衛隊というものが、いま多くの人がイメージしているものとは明らかに異なってきていること、しかも急激に変貌しつつあることを明らかにしています。
本書は、自衛隊の本質が軍隊であり、それは対米従属、侵略的軍隊、反国民的軍隊、違憲の軍隊、と4つの本質・特徴があるといいます。自衛隊は警察予備隊から自衛隊までになって行く過程を経て、東西対立の終焉、アメリカの世界戦略の変化に伴い、それに歩調を合わせながら変貌し、ますます米軍の戦略に組み込まれてきています。たとえばイラクへの派遣の実態ではアメリカのイラク攻撃の準備段階で自衛隊も派兵準備をしていたことが推測できるそうです。また陸上自衛隊は戦地イラクを体験した幹部をそののち主要な役職につけました。兵器や施設・設備の戦時仕様を学び開発に活かす機会としても最大限、活用しました。
専守防衛の自衛隊ならば合憲だという人の中にも、今日の自衛隊の実態を知れば、自衛隊増強と戦地への派遣には賛成できない人が多くなるのではないでしょうか。
当研究所は6月19日(金)に唯一の自衛隊違憲判決を書いた元裁判官、福島重雄さんなどの講演会を開催します(こちら)。判決後38年を経ている自衛隊の存在を福島さんがどのように見ているのでしょうか。多くの方々に講演会に参加していただきたいと思います。
【書籍情報】2009年4月刊行。「シリーズ世界と日本」21−37『よくわかる自衛隊問題―「専守防衛」から「海外派兵の軍隊」へ』
内藤功編著、紙谷敏弘・上原久志著
発行所:学習の友社
*「平和主義」や「自衛隊海外派遣」などに関わる文献は当サイトの「憲法文献データベース」で検索できますので、ご案内します。
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