雑誌『世界』(岩波書店)にこれまで掲載されてきた憲法関連の論文の選集です。
編者の樋口陽一教授は「はしがき」の冒頭で次のように述べています。
“ぬるま湯のなかでふやけたものになっている憲法を後生大事にかかえこんでいる戦後日本の民主主義は、もう時代遅れだ”―――言い方はもっとソフィスティケートされたものからもっと下品なものまでさまざまだが、こんな論法が流行っている。
・・・雑誌『世界』を読みかえすだけの労をとれば、戦後つみ重ねてきた自己懐疑、そしてその中から希望の芽を探り出そうとするいとなみがそんなやわなものでなかったことを、知るはずである。
いまこそ日本社会と憲法について真剣に考えてみようという熱烈な呼びかけです。先人たちの様々な思索や発言は熟慮を重ねた結果であり、自分の生き方を賭けてのものだということでしょう。今を生きる人間としてそれらから多くのことを学び考えることができるということでしょう。
その様々な論文、エッセイ、座談会など41編が精選されています。その全てを読み、評するにはそれ相応の時間が必要となるでしょうが、少し読み始めるだけで、樋口教授の呼びかけの重さを感じることになります。
ぜひとも多くの方々に読んでいただき、語り合いたい、珠玉の論文選だと思います。
書籍情報:2006年2月、岩波書店から刊行。編者は井上ひさし氏と樋口陽一教授。定価(本体2000円+税)
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