フランス・ナポレオン皇帝のポルトガルに侵攻し、ウェリントン率いるイギリス軍がポルトガル軍を支援し、フランス軍をくいとめました。そのたたかいが描かれた映画です。戦闘シーンもありますが、追うフランス軍、追われるポルトガル軍・イギリス軍と民衆の、戦時中の様々な様子が出てきます。それは、軍の幹部が安泰である一方で、民衆が戦争に巻き込まれる姿などです。女性たちが犠牲になっている様子もリアルに描かれています。
この映画への評価は多様だと思いますが、フランス革命とナポレオンの台頭という当時の歴史的状況を思い浮かべながら観てみると、得るところも多くあります。自由や平等という価値がフランス人権宣言に謳われ、それが近代憲法の確立に結びついていったことの意義は積極的に評価されるべきでしょう。ただ、それを実現する政治の理念となった「国民主権」考え方は国民の軍隊への徴用を促進することにもなり、それがナポレオンの台頭と他国への侵攻につながっていったということがあります。この映画は、そのような時代状況を確認するのに役立ちました。
近代市民革命の結果、戦争というものに国民が動員されるようなったわけですが、国際社会においては、やがて戦争そのものが原則違法とされる時代になりました。しかし、なお戦争は根絶されていません。こうした戦争というものの歴史をあらためて自分なりに整理しておきたいものだと感じました。
【映画情報】
製作年度: 2012年
製作国:フランス・ポルトガル合作
上映時間:152分
監督:バレリア・サルミエント
出演:ジョン・マルコビッチ、マチュー・アマルリック、メルビル・プポー、ほか
*全国各地で上映中。公式サイトはこちら。
<法学館憲法研究所事務局から>
法学館憲法研究所双書『世界史の中の憲法』(浦部法穂著)の第3章は「国民主権という考え方の歴史」、第5章は「戦争と平和の歴史」となっており、国民主権や戦争の歴史を学ぶことができます。ご案内します。
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