奴隷制度は19世紀にも各国に残されていました。アメリカではその存置をめぐる問題などで南北戦争という内戦が繰り広げられていました。当時の様子と、アメリカ合衆国憲法の改正によって奴隷解放を実現したリンカーン大統領の姿を描いた映画です。
人は誰もが平等である、ということに異議を唱える人は、こんにちではほとんどいないでしょう。しかし、それは過去の人々の主張やたたかいがあったから、と言えるでしょう。奴隷制度廃止への人々のたたかいも、間違いなくその一つでしょう。
アメリカには、19世紀半ばに至るも、奴隷制度は本来廃止されるべきだが、では直ちに彼らにも選挙権を与えることに合意が得られるのか? 奴隷の存在を前提に生活と経済が成り立っている地域の実情も配慮されるべきではないか? 等々の主張があったのです。そうした主張の背景にある当時の人々の実情にも思いを馳せる必要はあるでしょうが、やはり自由や平等といった近代市民社会の積極的理念の意義を確認しなければならないでしょう。
こんにちの日本社会にも様々な不平等がいろいろな理由で温存されています。労働者の多くが非正規に追いやられ、いわば"不平等"が強いられていても、会社と経済の生き残りのためには仕方がないと言わんばかりの経済界や政界の姿勢を追及せねばならないと、この映画を観て、あらためて思いました。
【映画情報】
製作年度: 2012年
監督: スティーヴン・スピルバーグ
出演:ダニエル・デイ=ルイス、サリー・フィールド、デヴィッド・ストラザーン、ほか
上映時間: 150分
* 現在、全国各地の映画館で上映中。
<法学館憲法研究所事務局から>
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