富を築き上げた会社の社長とホステスが結婚し、やがて2人が乗る乗用車が海に転落。社長は死に、ホステスは生き残る。ホステスは夫に多額の保険をかけていたことから、保険金殺人の容疑で逮捕・起訴される。裁判ではどうなったか。
このような話の映画です。辣腕の女性弁護士がホステスを弁護する活動などが描かれています。
罪を犯した人に相応の刑罰を科すことは必要でしょうが、一方で無実の人が濡れ衣を着せられてしまうような社会では、私たちは安心した生活を送れません。多くの国民は、事件の容疑者が逮捕され、容疑者の残忍な性格などをマスコミなどが報道し始めると、その容疑者を犯人だと決めつけ、必罰・厳罰を求めがちです。しかし、人を有罪にするには具体的な証拠によって、もはやその人が有罪であることに「合理的な疑い」はないところまで検察官が立証することが前提となります。この作品を観て、人類が築き上げ、憲法で具体化してきたこの原則とその英知を多くの人々と確認したいと思いました。
シンプルな問題設定ながら、出演者の重厚な演技で、胸にズシンとくる作品です。
【映画情報】
製作年:1982年。
原作:松本清張。
監督:野村芳太郎。
出演:桃井かおり、岩下志麻、加賀丈史、ほか。
<法学館憲法研究所事務局から>
法学館憲法研究所は10月8日(月・祝)に「裁判と憲法 −裁判員制度・死刑制度を考える」を開催します。村井敏邦教授が講演し、その後浦部法穂・法学館憲法研究所顧問(=神戸大学名誉教授)と対談します。詳細はこちらからご確認ください。
裁判に市民が参加するようになっており、「疑わしきは被告人の利益に」という憲法原則の意義が多くの人々の理解になっていく必要があります。政権の座についた民主党中心の政権のもとで、裁判員制度や死刑制度の問題はほとんど進展しておらず、あらためて国民が学び、声をあげていくべき時期です。多くの方々のご参加をお待ちしています。
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