福井県の海岸に某国の武装部隊が上陸。警察が対応するのか、自衛隊が対応するのか、相手の攻撃に対して武器を使用できるのか、等々について政府の決断が遅れる中で、銃撃による死傷者が出てしまう。諸国が、もはや日本は有事だと認識し、日本と東アジアに軍隊を送り始める。実はかねてから、某国のスパイが日本で情報収集活動にあたっていた。日本の防衛機密が某国に漏れていたのである。
話はこんなふうに展開していきます。
「備えあれば憂いなし」として、2004年、日本が有事になったときの対処方法に関わる一連の法律が制定されました。こんにちでは東日本題震災での政府の対応の遅れなどを理由に、憲法に非常事態条項を加えるべきとの言説が唱えられています。しかしながら、こうした議論には、非常事態に対して自衛隊の実力行使を無制限に広げていこうという傾向があり、それは慎重に検討されなければならないように思います。
この「宣戦布告」のような映画によって、憲法9条の非武装平和主義に疑問を持つ人も増えることになるのでしょう。有事関連法制の成立にも寄与したことでしょう。しかしここは冷静に日本と東アジアの安全をめぐる状況を見極め、憲法9条をどのように実現していくべきなのか、を考えなければならないと思います。そして、その展望を多くの人々により説得的に語っていく必要性を、あらためて感じました。
【映画情報】
製作年:2001年
上映時間:106分
監督:石侍露堂
出演:古谷一行、夏八木勲、杉本哲太、ほか
<法学館憲法研究所事務局から>
9月15日(土)、「平和と憲法 − "武力なき平和"のリアリティ」と題して水島朝穂氏(早稲田大教授)が講演し、当研究所の浦部法穂顧問(=神戸大学名誉教授)と対談します。こちら。日本国憲法の平和主義についての第一人者の話を多くの方々に聴いていただきたく、ご案内します。
* 水島朝穂教授の「平和憲法のメッセージ」
|