1945年8月15日、天皇が国民に対してラジオで、ポツダム宣言の受諾を伝えました。日本は天皇の名で開戦し、国民はその戦争を聖戦だと教え込まれました。軍部やほとんどの政治家は、ポツダム宣言を受け入れるにあたっても、その後も天皇制が維持されるのかどうかが最大の関心事となりました。天皇制維持のために必死になる者も多くいたでしょう。この映画は、天皇がポツダム宣言受諾を国民に表明する、8月14日から15日にかけて繰り広げられた攻防="死闘"を描く作品です。
実際の史実がどうだったのかは、さしあたり問いません。当時の日本の軍部や政治家の中に、死を賭してでも天皇制を維持したいとの思想があり、筆者はその思想がこんにちの日本にも残されている、ということに注目すべきと思います。
戦後に制定された日本国憲法が国民主権を明確にしつつも、象徴天皇制を採ることになった、その歴史的背景を考えてみようとする時、この映画からもいろいろなヒントを得られるように思います。
【映画情報】
製作年:1967年。
上映時間:157分。
監督:岡本喜八。
出演:三船敏郎、黒沢年男、笠智衆、ほか。
<法学館憲法研究所事務局から>
日本がポツダム宣言を受諾し、その後日本国憲法を制定し、それが戦後の社会の大きな枠組みをつくることになり、こんにちに至っています。ただし、20年くらい前までは日本人の生活が「向上」していきましたが、その後状況が一変してきています。これまで日本社会のあり方を憲法の視点で問うてきた浦部法穂・法学館憲法研究所顧問(神戸大学名誉教授)の連続講座「生活と憲法」(2012年5月19日開講。全5回)が開講されます。多くの方々に受講していただきたく、ご案内します。 |