世界には、いまなお、富める者が強権的に人民を支配したり、また「強国」が他国に帝国主義的な侵略(戦闘行為だけでなく経済的な侵略も含む)をしています。1960年代、アメリカのベトナムへの帝国主義的侵略やそれに加担する国の政府への抗議なども大きな課題の一つとなって、世界で学生運動が高揚し、その中には極左暴力主義的な動きも現れるようになりました。
この映画は当時のドイツ赤軍=「バーダー・マインホフ・グループ」の「闘争」を描いたものです。「社会正義」を求め理想に燃えたバーダーとマインホフが立ち上げた組織はやがてテロリズムに走ることになり、仲間割れも生じ、その理想は砕け散ることになりました。
テロリズムは許されません。それはこんにち各国政府も声を大にしていることです。しかし、その政府の施策にはテロリストたちが指摘するような問題点があることは事実です。テロリズムという手法は許されませんが、富める者による強権的な人民支配や他国への帝国主義的な侵略に対する市民の異議申し立て自体はいまなお認められるべきことです。それは市民の権利の実現と世界の平和を希求している日本国憲法も想定していることです。映画を観てみて、このことも再確認しなければならないと思いました。
【映画情報】
製作国:2008年ドイツ・フランス・チェコ合作映画
上映時間:2時間30分
監督:ウリ・エデル
キャスト:マルティナ・ゲデック、モーリッツ・ブライブトロイ、その他
* ドイツ赤軍の名は日本赤軍を倣ったそうです。日本とドイツの社会には様々な共通項・類似性があるように思われます。日本とドイツの社会や政治の異同について考えるものとして、下記をご案内させていただきます。
■講演録「憲法の視点でドイツと日本を検証する」(伊藤真)
−「法学館憲法研究所報」創刊号(2009年7月)に収載
■論文「憲法改定をめぐるドイツと日本」(森英樹)
−法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証』に収載。この論文の紹介はこちら。
■法学館憲法研究所双書『憲法9条新鮮感覚 − 日本・ドイツ学生対話』
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