2005年に公開され大ヒットした『ALWAYS 三丁目の夕日』の続編です。1959年春の東京「夕日町三丁目」商店街。建設中だった東京タワーも、あれから4か月たって、まだ空気の澄んでいた広く青い空に向かってまっすぐ伸びています。高度経済成長が始まる前の昭和のにおいがぷんぷんする情緒たっぷりの街並み。あちこちに緑の雑草が生える空き地で子どもたちは活発に遊びまわっています。高速道路に覆われない日本橋も、見事なCG(コンピューター・グラフィックス)で再現されています。
翌年の日本は、安保条約が改定されるとともに、高度経済成長が本格的に始まり、戦後日本の軍事面、経済面の節目となりました。それから日本は何を得、何を失ったのでしょうか。ユーモアと人情たっぷりの巧みな演出に、笑いころげ、また、涙しつつも、現代を鋭く見つめ直さずにはいられない秀逸な作品だと思います。
貧しい駄菓子屋を営みつつ、彼を慕う少年淳之介(須賀健太)と暮らしていた茶川(吉岡秀隆)のもとに、淳之介の父川渕(小日向文世)が再び息子を連れ戻しにやって来ます。経済の成長の波に乗り一流の教育をさせたい川渕。この時代の二つの顔が鮮やかに対照されます。淳之介は茶川から離れようとしません。茶川は踊り子のヒロミ(小雪)を想いながら、一度はあきらめていた“芥川賞受賞”の夢に向かって猛然と純文学の執筆を始めます。
一方、向かいの鈴木オートでは、事業に失敗した親戚の娘美加を一時預かることになりました。鈴木家の少年一平(小清水一揮)はちょっと反発しますが、父則文(堤真一)、母トモエ(薬師丸ひろ子)は美加を家族同様に温かく迎え入れます。
喜怒哀楽を共にする隣近所の人々の輪の中に、茶川とヒロミ、鈴木オートの従業員六子(堀北真希)といかさま詐欺師っぽい武雄、一平と美加のそれぞれの想い合いが溶け込んでいます。
茶川は芥川賞を取れたでしょうか。作家として「人にものを伝えるとはどういうことか」を一生懸命考えたという山崎監督。それは、映画を作る監督の自問でもあるでしょう。映画が終わって、涙で立ち上がれない雰囲気が客席に漂っていました。「豊かさはカネじゃない」。監督の想いが十分伝わったのでしょう。
主題歌の「花の名」の一節です。
あなたが花なら 沢山のそれらと
変わりないのかもしれない
そこからひとつを 選んだ
僕だけに 歌える唄がある
あなただけに 聴こえる唄がある
【映画情報】
製作:2007年 日本
監督・脚本:山崎貴
原作・西岸良平
時間:146分
出演:吉岡秀隆/堤真一/小雪/堀北真希/もたいまさこ/三浦友和/薬師丸ひろ子/須賀健太/小清水一揮/小日向文世
主題歌:藤原基央
上映館:全国各地で公開中
公式サイト
|