戦争は、終わっても無数の深い傷を残します。15年戦争についても、私たちの知らないことはあまりにも多いです。この映画は「棄てられた兵隊」を描いたドキュメンタリーです。
ポツダム宣言に従って武装解除されることなく、また、平和憲法を享受することなく、中国との戦争が終わってから4年間も、中国の山西省に残り戦争を続けた残留兵2600名がいました。蟻のようにただ黙々と戦って550余名が戦死。生き残った者は捕虜になり戦後9年たってから帰国しました。彼らは上官の命令に従って,共産党軍と戦わされていました。
残留兵たちは、日本軍の司令官と中国国民党軍の間の密約で残留させられたと訴えてきました。しかし日本政府は、「彼らは逃亡兵であり、自らの意思で残り、勝手に戦った」として黙殺し、軍人恩給を支給しませんでした。残留兵たちはこれを不服として国を相手に提訴します。映画に登場する奥村和一さん(81歳)も原告の1人です。終戦間近の昭和20年、奥村さんは“初年兵教育”の名の下に罪のない中国人を刺殺するよう命じられていました。今も体内に無数の砲弾の破片を抱えています。東京高裁では敗訴になり、最高裁に上告しました。
未だに恩給さえ支払わないことは、国や裁判所がやっている他人事ではなく、私たち自身がやっていることではないか、という思いを強くする映画です。
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【映画情報】
制作:2005年 日本
時間:101分
監督:池谷薫
主な出演者:奥村和一/金子傳/胡平
上映館:7月22日渋谷イメージ・フォーラムより順次公開
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