――― 東京の裁判の特徴はありますか。
さきほど言いましたが、外国人学校は、イ、ロ、ハに分類され(編集部注:イは国交のある国の学校、ロはインターナショナルスクール、ハは国交のない台湾や朝鮮民主主義人民共和国)、朝鮮学校は、ハとされていますが、2013年2月に文科大臣は高校無償化法施行規則からハを削除してしまいました。
ハを根拠にすでに指定された学校はそのまま継続し、朝鮮学校は削除によって外国人対象校として指定を受ける権利を永遠に奪われてしまいました。これは明らかに朝鮮学校を標的にしたものといわざるをえません。これは、朝鮮学校に対する差別です。拉致問題や朝鮮総連と朝鮮学校との関係を問題にする政治的思惑で行われていると思います。
ハの削除によって、東京朝鮮中高級学校をはじめ全国に10ある朝鮮高校が指定から排除されたのです。その理由は、「文科大臣の指定する規定に朝鮮学校が適合しているとは認めるに至らなかった」というものです。どこが適合していないかという根拠はまったく明らかにされていません。
そもそも2010年4月に施行された高校無償化法は、「社会全体であなたの学びを支えます」というキャッチフレーズの下で、全ての意志ある高校生等が安心して勉学し、日本国内に住所がある生徒に対する就学支援金制度です。当時の文科大臣は「国籍を問わず、我が国において後期中等教育段階の学びに励んでいる生徒に等しく支援することは、教育についてのすべての者の権利を謳っている国際人権宣言A規約の精神にも沿うものと考えます」と述べているように、この法律は支援を受ける生徒の国籍を問わない画期的なものでした。
――― 運動の広がりがあるようですが。また、国連の委員会から勧告もでています。
当初から、日本の高校生や在日問題に直接関係のない団体などからの支援が多くあり、運動も広がっています。同時に反対する側も強くなっています。
国連社会権規約委員会での日本報告審査で、朝鮮学校の無償化除外が取り上げられ、日本政府代表は、「拉致問題に進展がないこと、朝鮮総連との密接な関係にあり、教育内容、人事、財政に影響が及んでいること」を理由にあげて説明しました。しかし、2013年5月に公表された総括所見では、朝鮮学校除外は差別にあたり、朝鮮高校生にも就学支援金が適用されるよう勧告され、日本政府の弁明は国連の世界では通用しませんでした。
国連社会権規約委員会による朝鮮学校の子どもたちへの無償化適用の勧告を日本政府は無視しました。。ヘイトスピーチへの適切な対処や日本軍「慰安婦」問題などとともに朝鮮学校への「高校無償化」制度適用や地方自治体が補助金を再開・維持するよう日本政府が勧めることなどが勧告されました。これは日本も批准している条約の下で設置された委員会の勧告です。人種差別を許さないという国際的に認められた共通認識の下では、朝鮮学校に通う生徒に就学支援金を支給しないという現在の日本政府の立場は、世界的にみても到底に認められないことはあきらかです。裁判の勝利を確信しています。
――― 勝訴を勝ち取れるよう祈っています。ありがとうございました。
◆長谷川和男さんのプロフィール
1947年生まれ。1972年から東京都の小学校教員。退職後、市民運動に携わる。 |
<関連情報>
・映画「60万回のトライ」上映スケジュール
・当「今週の一言」ページ2014年3月17日付けで、映画「60万回のトライ」の監督・朴思柔さんに作品への思いを語っていただきました。こちら。
・東京朝鮮高校生の裁判を支援する会
東京朝鮮高校生「無償化」裁判支援集会
2014年10月18日(土)
開場13:00 開会14:00 終了予定16:00
東京・文京区民センター 3−A会議室
(資料代500円)
講師:阿部浩己(神奈川大学教授・東京朝鮮高校生の裁判を支援する会 共同代表)
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