―――金子先生は日本子どもを守る会で憲法の重要性について活発に発言されていますが、まずはその想いをお聞かせください。
(金子眞さん)
私はずっと埼玉県朝霞で小学校の教員をしてきました。ベトナム戦争のときでしたが、私が勤める小学校の隣に米軍の野戦病院があり、毎日3000人もの負傷兵が治療を受けていました。負傷兵は東京の横田基地からヘリコプターで運ばれてきました。学校の子どもたちは日々その様子を学校の窓から眺めていましたので、作文などでそのことを書きました。私は子どもたちの作文を教職員組合の集会で報告しました。すると翌日からマスコミ各社の学校への取材が殺到し、そして“学校の窓から見える野戦病院”というような見出しの報道が行われたんです。野戦病院というのは戦地にあると思われがちですが、それが小学校の窓から見えるところにあるんだと注目されたんです。この報道がきっかけで、その後その小学校は野戦病院から離れたところに移転することになりました。
私は地域の学校の教員としての体験から平和や憲法の問題に関わるようになったんです。
―――金子先生がたずさわっておられる「日本子どもを守る会」も憲法の理念を広げる活動をされていますが、ご紹介いただけますか。
(金子眞さん)
「日本子どもを守る会」は児童憲章と子どもの権利を実現するために1952年に結成され、憲法の精神を広げながら活動してきました。毎月機関紙「子どもを守る」と月刊誌「子どものしあわせ」を発行するとともに、毎年「子ども白書」をつくってきました。「子どもを守る文化会議」というイベントには毎年500〜700人くらいの方々が参加され、子どもを守るための活発な討論をしています。
「日本子どもを守る会」は全国各地にある地域組織や思いを共有する他の全国組織と協力・共同してとりくみをすすめています。個人会員として多くの学校教員や子どもたちの父母が加入してくださっていますが、多くの会員の皆さんが各地域で様々なとりくみにたずさわっておられます。誤った歴史認識を教える教科書の採択に反対するとりくみや学校現場での国歌・国旗の強制に反対するとりくみなどでも頑張っておられます。また、各地に生まれている「九条の会」でも頑張っておられます。
―――金子先生は長い間小学校で教鞭をとっておられましたが、小学校のところで子どもたちに憲法がどう教えられているのか、その問題点も含めてお考えをお聞かせください。
(金子眞さん)
小学校では高学年の社会科の授業で歴史の問題として憲法を教えることになるんですが、その実践は歴史教育者協議会の「歴史地理教育」に「基地と子どもたち」などとして紹介されています。
低学年の子どもには「けんか」を取り上げ、暴力を使うか使わないかを考えさせます。中学年では「戦争オモチャ」を教材にして、戦争について考えさせます。
なお、重要なこととして教員自身が憲法をどう理解しているかという問題があります。
―――国会で憲法「改正」の議論が進んでいます。憲法の理念を社会に広げるために金子先生のお考えになっていることをお聞かせください。
(金子眞さん)
三点申したいと思います。
第一に、憲法を実際に読むことが重要だということです。憲法の前文や9条が実際にどのような文章になっているかを確認するんです。自民党の新憲法草案は自衛軍の創設を提言しているんですが、その9条の案も実際に読んでみることです。実際に文字を追うことによって、多くの人々とその意味や問題点を確認していく必要があると思います。憲法の国民の権利と義務の部分の記述もぜひ多くの人々に読んでもらいたいと思います。生活に結びつけて考えてもらいたいと思います。
第二に、憲法の理念を広げる重要性について各地域と住民の課題・願いと結びつけて語っていくことです。自衛隊の海外への派遣が頻繁に行われるようになってきていますが、朝霞の自衛隊基地にそのための中央即応集団司令部が新設されようとしています。自民党の新憲法草案が自衛軍の創設を提言していることについて、このような問題とあわせて住民に注意を喚起していくことが重要です。
第三に、今日の憲法「改正」問題について有事法制の問題と結びつけて問題提起することです。有事法制が成立し、各自治体で武力攻撃に際しての避難計画が立案・実施されようとしています。このことも住民に憲法「改正」の問題点を具体的にイメージしてもらう上で有効だと思います。
―――「子どものしあわせ」に伊藤真所長の連載記事を掲載していただき、ありがたく思っております。今後とも子どもを守り、憲法の理念をともに広げていきたいと思います。本日はありがとうございました。
◆金子眞(かねこ まこと)さんのプロフィール
日本子どもを守る会常任理事。日本民間教育研究団体連絡会常任理事。
朝霞第2・第6・第8小学校教師歴任。歴史教育者協議会副委員長歴任。
著書として、『どう伸ばす子どもの学力 一・二年生』(一声社)、『続どう伸ばす子どもの学力 三・四年生』(一声社)、『一年生の教育から』(大月書店)、『一年生ひとりひとりを育てる』(日本書籍)、『一年生の生活と読み書き・算』(草土文化)、『五・六年生の読み書き算と総合の学習』(ふきのとう書房)がある。
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