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書籍『戦争経済大国』

S.K

 本書は過去の高度経済成長が「戦争」の産物であった実態を審らかにし、"平和憲法"の下で営まれてきたはずの私たちの社会がかくも愚かな選択をしつつあるのか、その原因を浮き彫りにする衝撃の1冊です。
 本書では、緻密な取材を重ねて得られたと思われる非常に多くの貴重な証言や資料、様々なデータによって、戦後日本の経済成長と米軍のアメリカの戦争に加担し続けてきたことの関係性が多角的に検証されています。いまの日本経済が夥しい人びとの犠牲の上にあったことはなかなか認めがたいことですが、本書に取り上げられている多くの企業の社史や証言などからすると当時の人々には周知のことだったように思われます。特需により儲けた企業の親族が現在の政界の中枢で国政を動かしていることなども明らかにされており、いま、憲法を変えてまでアメリカの戦争に加担したい人々の根底にある思想を推察することができます。
 「平和憲法のおかげで戦争によって他国の人を一人として殺さないで済んだ」というようなことも言われますが、本書を読むととてもそんなことは言えないと思い知らされます。
 朝鮮戦争では、特別掃海隊が一時的に米軍の直接雇用とされ米軍の上陸作戦に伴う掃海のために派遣され戦死者も出ていたこと、ベトナム戦争では極東管区米海軍運輸司令部の指揮下にある海上輸送隊に組み込まれたLSTと呼ばれる輸送船に、多い時では2000人近い日本人が乗船し、ナパーム弾や催涙ガス、戦車、ヘリ、飛行機、戦闘部隊などさまざまなものを運んでいたことなど、本書では元乗組員が当時の様子を詳細に語っています。また、日本でも枯葉剤や武器弾薬の一部が製造されていたことを裏付ける証言が多数収載されています。
 本書ではベトナム戦争に加担して利益を上げている企業を糾弾する「ハイエナ企業市民審査会」、「日特金属襲撃事件」さらには「三菱重工爆破事件」などにも焦点を当て、さまざまな視点から当時の様子が検証されています。
 第二次世界大戦において、400機近くものB29を束ねる爆撃機軍団を率い、「日本焦土化作戦」などと称して、東京、大阪、名古屋をはじめ、全国の都市という都市に爆弾の雨を降らせ、さらには広島、長崎への原爆投下作戦にも深く関与したカーチス・ルメイに対し、日本は1964年、天皇の名のもとに勲一等旭日大綬章を授与しています。当時の防衛庁長官だった小泉純也(元首相である小泉純一郎の父)は「戦後のわが航空自衛隊に対する顕著な数々の貢献に対する勲章の授与」と説明し、国会でも大した追及はなされなかったようですが、戦後のルメイはワシントンやヨーロッパの駐在が長く、あまり日本と関係がなかったそうで、本書では叙勲の背景などを数々の証言から推察しています。ルメイの理屈やアメリカのロジックを紹介し、戦争の本質を明らかにする一方、一般民間戦災犠牲者に対する援護法の立法化実現をめざし長年闘い抜いた杉山千佐子さんを取り上げ、空襲や沖縄戦の犠牲者は今なお補償の対象から外されたままであることも紹介されています。
 また、アメリカの戦争で財を成した代表的な沖縄企業の國場組の元会長である國場幸一郎インタビューでは、いま沖縄の抱える問題の根源が見える気がします。
 湾岸戦争の構造についての続編にも期待が高まります。

【書籍情報】2018年4月、河出書房新社より刊行。著者は斎藤貴男。定価は1800円+税。

【関連書籍・論文・HP】
  書籍『戦争のできる国へ ー安倍政権の正体』
  ブックレット『安倍改憲政権の正体』
  書籍『永続敗戦論?戦後日本の核心』
  書籍『戦後史の正体』


  

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