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ブックレット『ピンポイントでわかる自衛隊明文改憲の論点 だまされるな!怪しい明文改憲』

S.K

 憲法改正の発議、国民投票が現実味を帯びる中、法律の専門家が改憲派の主張の矛盾をまさにピンポイントで指摘するブックレットが超緊急出版されました。自民党改憲4項目を中心に、改憲の議論を前にこれだけは押さえておきたいという重要論点が平易な表現で見やすくコンパクトに解説されています。
 第1部では、9条改憲問題を7つのQ&Aで解説しています。また、元自衛隊員が9条改憲について語る「専守防衛で日本を守る。それが誇り」(末延隆成氏)と「憲法を変えなければならない不都合はありません」(西川末則氏)も収載されています。
 安倍首相は「素人は役に立たない」ので徴兵制の導入はないと言っていますが、末延氏は、車さえ運転できれば子供でも女性でも高齢者でも後方支援ができることや現在の装備は軽量簡便化され女性や子供でも扱えること、徴兵されたものを捨石にして権力者が生き残るのが戦争セオリーであることなどを指摘し、改憲後徴兵制が導入され、徴兵により集められた者が捨石にされる可能性があると警鐘を鳴らしています。
 第2部では、緊急事態条項、高校教育の無償化、参議院議員選挙の「合区」解消、その他、自民党が長年改憲のターゲットとしてきた家族の助け合い(憲法24条)や、公明党・希望の党が言及してきた環境権や知る権利などの加憲も取り上げQ&Aで解説しています。
 第3部では、国民投票法の問題点、「ナチの手口」に酷似している安倍内閣の手法、米軍基地や自衛隊施設が集中している沖縄と北海道から見た明文改憲についても語られています。
 なお、本書の刊行によせて伊藤真(当研究所所長)の「自衛隊の9条明記は、日本が<戦争する国>になることを意味する」も収載されています。
 「今の自衛隊を明記するだけならいいんじゃないの?」と思っている人にお勧めしたい1冊です。
 ご参考までに第1部の9条改憲問題の概要をご紹介させていただきます。
 Q1では、まず、改憲の国民投票に850億かかることを指摘。「現状を認めるだけ」の憲法改正であれば、850億もの費用は待機児童対策や奨学金の拡充にまわす方が有益であると述べています。そして実際には自衛隊明記によって、「自衛隊が世界中で戦うことが認められ、自衛隊の任務や装備が拡大する」と指摘します。「安保法制」により今の自衛隊は世界中での武力行使が任務とされてしまっていること、核兵器保有が憲法的に許されるとの閣議決定(2016年4月)、防衛費約5兆円の増額や、自衛隊の北朝鮮への先制攻撃が「自衛」であるという自民党安全保障調査会での主張(2017年6月)、などを紹介し、「後法優位の原則」から改憲によって9条1項、2項の規定が無力化され、政府が堂々と自衛隊任務の拡大や防衛費の増額を主張する可能性を指摘しています。
 Q2では、私たちの生活にどんな影響が出るのかについて、「安保法制」成立により除隊する自衛官が少なくないことや、稲田元防衛大臣の「男子も女子も自衛隊に体験入隊すべき」発言(2015年)、陸上自衛隊の戦闘部隊にも女性自衛官を配備する政府決定(2017年4月)などを紹介し、男女問わず「徴兵制」や「民間人の戦地派遣」の可能性があると指摘しています。
 Q3では、自衛隊明記は9条3項、あるいは9条の2の追加は、「9条を変えた」と国民に思わせないようにするための戦略であり、自衛隊明記に伴って73条や76条2の改憲、自衛隊員の過失による民間人殺傷の免責規定や「軍法会議」規定、報道規制、「緊急事態条項」導入、憲法前文の改憲などが必要になることなど、憲法改正が次々と検討・実施される可能性を指摘しています。
 Q4の「北朝鮮のミサイルに対抗するためには憲法改正が必要ではないでしょうか?」という問いに対しては、防衛装備の能力から改憲してもできることは限られており、憲法改正では北朝鮮がさらに軍事強硬路線をとり、日本周辺も不安定になるため、ミサイルを撃たせないための外交努力が必要であると述べています。
また、原発の再稼働や、に「ミサイルの動向を完全に把握」し「わが国に飛来する恐れがない」と発言しながら、12道県でJアラートを発令したこと(2017年8・9月)などを指摘し、「北朝鮮の脅威」情報が改憲や軍備増強を目指す安倍政権のまやかしであることを説明しています。
 Q5の「自衛のための武力行使は仕方ないのでは?」という問いに対しては、「対テロ」戦争を例に、武力行使や戦争の多くが「自衛」の名の下で正当化されてきたこと、自衛のための軍備は武力行使の抑止力にならないことが解説されています。
 Q6では、社会保障の充実や教育無償化などの議論では必ず財源が問題となるが、防衛予算の異常な増額にも関わらず財源が問題にされていないことを指摘しています。
 Q7では、2015年に導入された「安全保障技術研究推進制度」の現状から、改憲により「安全保障」「防衛」の名を借りた軍事研究がますます推進されていくことを解説しています。

【書籍情報】
2017年12月に現代人文社から発行。編者・執筆者は、清末愛砂(室蘭工業大学大学院工学研究科准教授)飯島滋明(名古屋学院大学経済学部教授)高良沙哉(沖縄大学人文学部准教授)池田賢太(弁護士)。執筆者は石川裕一郎(聖学院大学政治経済学部)岩本一郎(北星学園大学経済学部教授)、榎澤幸広(名古屋学院大学現代社会学部准教授)渡邊弘(鹿児島大学共通教育センター准教授)。定価は900円+税。

【関連書籍・論文】
書籍『私たちは戦争を許さない 安保法制の憲法違反を訴える』(岩波書店)
ブックレット「メディアに操作される憲法改正国民投票」(岩波ブックレット)
書籍『ナチスの「手口」と緊急事態条項』(集英社新書)


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