法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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書籍『気概 万人のために万人に抗す』

S.K

 「憲法的思考を貫き、人間の尊厳を追求する刑事法学を確立した小田中聰樹氏がその理論の真髄と展望を語るオーラルヒストリー」がERCJ選書の第3弾として刊行されました。ERCJ(略称:刑事・少年司法研究センター)は、刑事司法と少年司法の適正かつ健全な運営に資する、長期的な展望と広い視野に基づいた研究や提言を行っており、その一環として刑事司法や少年司法の時宜的なテーマに関する研究や、これらの分野に関わってこられた実務家、研究者及び市民の方々のドキュメンタリーをERCJ選書として提示しています。
 本書は、小田中氏が傘寿を迎えられた機会に小田中氏と親交の深い川崎英明(関西学院大学教授)、白取祐司(神奈川大学教授)、豊崎七絵(九州大学教授)串崎浩(日本評論社社長)の4名がインタビューを行い、小田中刑事法学の軌跡を、小田中氏の人格を育んだ生い立ちを含むパーソナルヒストリーとして記録したものです。
 小田中氏は、刑事訴訟法の歴史的分析の上に刑事弁護担い手論に立脚して、無罪推定よりも強力な無罪判決請求権を基軸とした刑事訴訟法理論を構築された学者です。その研究対象は刑法、少年法、司法制度、治安法、労働法、憲法等広範な領域に及び、憲法的思考を貫く骨太の刑事法学を追求されました。小田中氏の膨大な論文や声明は、冤罪救済運動などの人権を守り発展させようとする社会運動を支え、大きな役割を果たしてきました。
 小田中氏は、幼少期の戦争体験から、「人民の反戦・平和の意思、反戦・平和のための人民の連帯・運動に対し研究面から貢献したい」という思いがあり、「人民の連帯・運動を国家権力の刑事弾圧からどうやって守るか」というのが刑事訴訟法をはじめとする研究の「動機」であり「原点」であったと述べています。
 本書は小田中氏の目指した刑事訴訟法理論の姿をより明瞭にすると同時に、戦後日本の平和主義と立憲主義、それを支えた日本国憲法が危機にさらされようとしているいま、刑事法研究者にとってはこれからの研究の道筋を見定める上で、また実務法曹家にとっては法的実践のこれからの在り方を見定める上で、確かな視点と展望を与えてくれます。
 本書ではお父様、お母様をはじめとする小田中氏の良き師のこと、幼少期の戦争体験、戦後の教育、影響を受けた読み物などの小田中氏の人格形成や社会的意識形成の背景が年譜に沿って語られ、また小田中刑事訴訟法の軌跡をたどる中で「権力」の本質や「裁判官が良心的」であるために必要なことなども語られており、刑事訴訟法を知らない者にとっても読みやすい読み物となっています。
 本書には、下記の2つの文章と随筆「ホルーゲルと穂積文子先生のこと」(アジアの友、2016年6月〜7月号)も収録されています。
 「随想 裁判にとって法解釈学は無力か—『究極の良識』か『良心』か」(東北ローレビュー2号 2015年2月掲載)は、最高裁判事にもなった藤田宙靖氏の論孝「法解釈学説と最高裁の判断形成」に対する批判的検討であり、そこで語られる司法と法学のあるべき姿は若い研究者に対するエールのように思えます。
 「『憲法改定手続』はいかなる問題を抱えているか—その違憲性を論証する」(法と民主主義512号)では、現行の「改憲手続」の制度が民意を反映する構造的仕組みになっていないことを鋭く指摘しています。まず、憲法の「改定の限界」について、「現憲法の「基本原則」(平和主義=戦争放棄・武力不保持—交戦権否認、自由、人権、平等権、生存権、団結権)を「改定」することは、法的、理論的に不可能」であると述べ、その理由を挙げています。また、「発議」手続き自体の問題点、「発議」にあたり「内容に関連する事項ごとに区分」することの問題点、「国民投票法の方法」についても、様々な問題点を指摘しており、投票の有効無効の判断にあたっては「疑わしきは現行憲法の利益に」の原則適用を原則的に認めるべきとも述べています。

【書籍情報】
2018年1月に日本評論社から発行。著者は小田中聰樹(東北大学名誉教授)。インタビュアーは川崎英明(関西学院大学教授)、白取祐司(神奈川大学教授、北海道大学名誉教授)、豊崎七絵(九州大学教授)定価は1400円+税。

【関連書籍・論文・HP】
「戦争国死刑と国家、そして国家と人民」(みやぎ九条の会会報連載)
書籍『小田中聰樹先生古稀記念論文集 民主主義法学・刑事法学の展望—刑法・民主主義と法〔下巻〕556頁以下』広渡清吾・大出良知・川崎英明・福島至編(日本評論社)
書籍「気骨 ある刑事裁判官の足跡」石松竹雄著
書籍「守柔 現代の護民官を志して」守屋克彦著





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