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書籍『憲法9条改正、これでいいのか 詩人が解明—言葉の奥の危ない思想—』

M.I

 志ある小冊子の登場です。著者は、詩人の谷内修三(やち・しゅうそ)です。谷内はいかにも詩人らしい感性で、自民党改憲案の偽善性と、真相を暴き出します。
 始まりは2017年5月3日の読売新聞での安倍首相のインタビュー記事でした。ここで安倍首相は、自衛隊を合憲であると憲法に明記する「加憲」を行うと発表します。その後、首相の指示により「自民党憲法改正推進本部」のまとめた「たたき台」は以下の通りです。
 第9条の2
 @ 前条の規定は、我が国を防衛するための最小限度の実力組織としての自衛隊を設けることを妨げるものと解釈してはならない。
 A 内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高指揮権を有し、自衛隊は、その行動について国会の承認その他の民主的統制に服する。
 うっかり読むと何と言うことのない「加憲」のようですが、詩人はこの「たたき台」の罠を見抜きます。それは「主語」と「動詞」にこだわって現行憲法と読み比べることです。現行憲法は、以下の通りです。
 第9条
 @ 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 A 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 注目すべきは、現行憲法の「主語」が一貫して「日本国民」であるということです。「日本国民」は「戦争を放棄する」。これを具体的に言いなおしたのが「戦力を保持する」ことを日本国民は「認めない」。「交戦権」を日本国民は「認めない」。著者は言います。「このときの『日本国民』というのは『抽象的』な存在ではない。…それは、私たちひとりひとりである。言い換えると『私』である。」

 ところが、自民党の「たたき台」では、この「主語」が「日本国民」ではなくなります。条文には「だれ」が「主語」なのか書いていない。詩人はこれが大問題であり、自民党の「たたき台」の「罠」だとズバリ指摘します。書かないことで「ごまかしている」というのです。「自衛隊を設ける」と言うのだから、当然個人ではできません。「自衛隊」を設けることのできる「誰か」が「日本国民/私/個人」に対して「解釈してはならない」と命令しているのです。そして9条の2の2で突然「内閣総理大臣」が出てきます。ここで「日本国民は、自衛隊が戦力であると解釈したり、その解釈にもとづいて、自衛隊を設けようとする内閣総理大臣にたいして反対といってはいけない」と、「日本国民」は国家から「禁止事項」を言い渡されることになります。「日本国民」は「主役=主権者」ではなくなるのです。
 このあたり詩人の驚くべき洞察力です。なんとなく「加憲」かと、のんびり構えていられなくなります。この後も、9条を骨抜きにして「独裁」を目指す自民党の本音を詩人は次々と明らかにしていきます。
総選挙で自公など改憲勢力が三分の二を超し、改憲がいよいよ具体化しそうな今こそ読みたい一冊です。

【書籍情報】
2017年8月にポエムピースから発行。著者は谷内修三氏。定価は750円+税。





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