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書籍『「なんとかする」子どもの貧困』

M.I

 現在の日本で最も重大な社会問題のひとつは、子どもの貧困の問題だと言えます。著者は、あの年越し派遣村で一躍有名になった貧困問題に取り組む社会活動家です。活動家だけあって、単なる貧困問題の社会的背景や、理論付けに終わる本ではありません。それが題名にある「なんとかする」に表れている極めて実践的で、一ミリでも社会を動かし、子どもの貧困を減らしていくための社会の最前線のルポルタージュになっています。
 子どもの貧困率は、2015年の段階で13.9%(2017年6月、厚労省発表)。全国に約280万人。これは、東京都と千葉県の同年齢の子どもをすべて足したより多い数です。7人に1人の割合です。数字ではピンときませんが、ある「こども食堂」での話が出てきます。今日は鍋にしようと、大人たちが鍋料理をつくったところ、高校生の女の子が「みんなで鍋をつつくって、本当にあるんだね」と言ったといいます。彼女には、その経験がなかったのです。みんなで鍋をつつくというのは、テレビの中だけで起こるフィクションだと思っていたようです。スーパーマンが空を飛ぶように。
 同様の話を、よく聞きます。大学生のボランティアに会った中三生が「大学生って、本当にいるんだね」、簡単なクリスマスパーティをしたら「これって現実なのかなぁ」。中三生でも「偏差値」という言葉を知らない。高校生がテスト中に先生を呼び止めて「『氏名』ってなんて読むの?」と聞く。「あたりまえ」の経験や知識が欠如している子どもたちが増えている。この子たちが世の中を回すようになったとき、世の中はどうなるのだろうか。
 このような状況に腐らず、諦めず、一ミリでも対策を進める人たちが、まだこの国にはたくさんいる!
 一ミリを動かすどんな試みが巷に溢れているか。著者はその諸相を紹介していきます。そこには、状況の厳しさと同時に、それに立ち向かう希望が示されます。著者は断言します。子どもの貧困は減らせる。私たちの社会は、私たちの手で変えていける。それは、たった一ミリに敬意を払う、私たち自身の姿勢から始まるはずだ。
 全国に急速に広がった「こども食堂」も当初あった貧困家庭という限定は取れ始めています。大事なことは、子どもが一人ぼっちで食事をしなければならない孤食を防ぎ、さまざまな人たちの多様な価値観に触れながら「だんらん」を提供することです。これからの「こども食堂」は多世代交流型になり、子ども専用食堂ではなくなっていくようです。
 本書には各地で行われている民間や自治体の取り組みが数多く紹介され、「貧困の連鎖を断つ」ことに資する諸実践が取り上げられています。きっと解決できる最前線の数々に、まだまだ日本も出来るのだという勇気も湧いてくる本です。

【書籍情報】
2017年9月に株式会社KADOKAWAから発行。著者は湯浅誠法政大学現代社会福祉学部教授。定価は800円+税。




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