法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

書籍『伊藤真の憲法入門 第6版―講義再現版』

M.I

 伊藤真法学館憲法研究所所長による憲法入門の最新版です。前回の改訂版(第5版)が2014年でしたが、この間憲法を巡る情勢は怒涛の如き勢いで、伊藤所長も「近時の第2次安倍内閣以降においては、特定秘密法の成立、安全保障をめぐる方針の転換、安保関連法(安保法制)の成立、辺野古新基地問題、総理大臣による改憲宣言、いわゆる共謀罪の成立など、憲法の根本的価値を変更しかねない動きが多く生じています」と指摘します。
 本書ではいきなり憲法の本質が語られます。「憲法は『1人ひとりの人間を個人として尊重する』ということを最大の価値としています(13条前段)。これを個人の尊重とか個人の尊厳といいます。どんなに貧しい人も豊かな人も健康な人も障害をもった人も、肌の色が違っていようが、宗教が違っていようが、皆かけがえのない存在なのであり、すべて個人として尊重されるべきだという考え方です。そこには個人がすべての価値の根元であり、1人ひとりの個人のために社会があり国家があるのであって、決して国家のために個人があるのではない、という徹底した個人の尊重という価値観が存在しているのです。」
 本書の構成は、憲法総論に続き、各論としての基本的人権と統治機構、そして平和主義の原理でまとめられています。最も大切なところが「憲法とは何か」という総論です。まず「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」という憲法99条が示されます。「ここに『国民』は入っていません。国民に憲法を守れとは、憲法は一言もいっていないのです。これは大きなポイントです。」「したがって、憲法というのは国家権力者の側に対して向けられたもの、国家権力の側を規制するものと解釈することになります。」つまり憲法は「国家権力を制限して、人権を保障する法」と定義され、立憲主義が明らかにされます。
 ここで解釈改憲の話題が出てきます。「安倍首相は最近、集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲という手法を駆使し、その上で、『最高の責任者は私だ。政府答弁に私が責任をもって、その上で私たちは選挙で国民の審判を受ける』という内容の見解を述べています。しかし、この見解は立憲主義を理解していないものといわざるをえません。国民の多数の支持があっても、政治家が従わなければならないのが憲法です。選挙で審判を受けていれば何をやってもよいという発想自体が立憲主義を理解していないことのあらわれです。解釈改憲という手法は、立憲主義に反し、許されないものです。」

 盲点を突く指摘もあります。「ところで、『憲法というのは、この個人の尊厳を中核として人権・統治が目的と手段となっている。そんな関係として捉える。それが憲法なのだ。憲法の根本は、個人の尊厳にある』というふうに私がいったとしたら、それはうそなのですよ。いいでしょうか?それは間違いです。『憲法の根本は個人の尊厳にある』ではないのです。個人の尊厳と考える『べき』であるという主張にすぎないのです。客観的な事実として、個人の尊厳が根本だとはどこにも書いてありません。それは、憲法のさまざまな歴史であるとか、人権の歴史などの流れの中で生まれた、『個人の尊厳を根本と考えるべきである』という主張なのです。」「それは、『である』」ではなく、『「べき』の世界のものなのだということを決して忘れないでください。」
 基本的人権の各論では、1票の価値、非摘出子の法定相続と憲法、共謀罪、辺野古新基地問題、集団的自衛権、安倍首相の改憲発言など、最近の重要事例が次々と取り上げられ、読み応えのある新版となっています。
 伊藤所長の言葉です。「2017年5月3日には、日本国憲法が施行されて70年を迎えました。こうした憲法をめぐる情勢は悪化の一途をたどっているといわざるとえない情勢にあるからこそ、今一度、日本国憲法の基本的価値や基本原理を十分に理解する必要があるのではないでしょうか。」

【書籍情報】
2017年9月に日本評論社から発行。著者は伊藤真法学館憲法研究所所長・伊藤塾塾長。定価は1700円+税。

【関連書籍・論文】
伊藤真『伊藤真の日本一やさしい「憲法」の授業』(KADOKAWA)




[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]