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特集『改憲は子どもに何をもたらすか〜児童憲章の再発見〜』

M.I

 「憲法施行70年の節目の年にあたる今年、文部科学省は小中学校の学習指導要領と幼稚園の教育要領の改訂を公表しました。」それは「『道徳』」を特別な教科に格上げして、子どもの人格の支配を狙う学校教育の大改造であり、『戦争する国』への人づくりに繋がる『教育改革』です。」「安倍政権はここ2〜3年の間に改憲に向けてなり振りかまわずに突っ走る構えです。日本の行く末、子どもの未来を見る時『戦争をする国』への暴走か、世界に国々の新しい動きを見据えて平和を築いていく国への歩みを進めるのか、いま大きな岐路に立っている」と言えます。『子ども白書2017』は、このような問題意識において、特集として「改憲は、子どもに何をもたらすのか〜児童憲章の再発見〜」を組みました。

 特集インタビュー「私にとっての憲法」、はじめは『ボクラ少国民』シリーズで知られる児童読み物作家の山中恒さんです。軍国少年として育った山中さんは、子どもたちにいろんなことを疑うことを勧めます。「先生や親の言うことも納得いくまで考えようよ。教育は、疑いを持たせなきゃだめだと思うんだよね。いつの時代も権力は、子どもを有効な道具として使うから。」
 続くインタビューは「全日本おばちゃん党」の法学者、谷口真由美さんです。谷口さんは「義務教育で習っているはずなのに、憲法のことがびっくりするほど知られていない」と嘆き、「改憲と護憲とかの議論の前にまず『知憲』でしょ」と呼びかけます。
 マンガ家の柏木ハルコさんは、25条の生存権に注目します。「誰だってそんなに立派じゃないです。弱かったりずるかったりってところも含めて、人間だと思います。それを自己責任だと言いはじめたら苦しくなります。だから、生活保護法にも書かれている無差別平等が大切なんです。今はなんか息苦しい感じの社会になってて、そういう空気がイヤだなって思いますね。」
 宇宙物理学者の池内了さんは、自衛隊明文化と科学技術研究の軍事化が並行して進んでいることを懸念します。「いま、子どもたちが健全に育つような環境・社会を、われわれ大人がどう作っていくかが決定的に問われています。大人が、戦争はいけないという当たり前のことをちゃんと言わなきゃいけない。」

 特集論文の1本目は、憲法学者の木村草太首都大学東京教授の「子どもと憲法・児童憲章 『自立した個人』としての子ども」です。教授は子どもを管理対象ではなく、主体として尊重することを強調します。しかし残念なことに、現状では、子どもを自律的な個人として尊重する憲法の理念が十分に実現できていないと指摘します。例として挙げられるのが、マスコミでも盛んに報道された組体操問題です。タワーやピラミッドを指導し、それを支持する保護者にあるのは、「子どもを主体ではなく、感動の物語の道具として、管理される対象と考える思考です。」
 また、超党派の議員連盟が準備を進める「親子断絶防止法案」の危険性も指摘し、解説しています。

 特集論文の2本目は、法学館憲法研究所の伊藤真所長による「改憲は子ども・家族・学校に何をもたらすか」です。伊藤所長は、子どもを人権の主体と位置づけた現憲法と児童憲章の意義、そしてその理念を発展させた子どもの権利条約の意義をまず解説します。伊藤所長は、大人がなすべき3つのフォローとして(1)有害環境を取り除く、(2)必要な制度づくり、(3)より大きな制約を挙げます。そして、子どもの日常と人権について具体例を挙げ解説します。それは、(1)学校に通うこと〜教育を受ける権利、(2)メールのやりとり〜意見表明の権利、(3)遊ぶこと〜自己決定権です。そして最後に自民党の改憲草案に触れます。自民党の改憲草案の特色は「個人のための国家」から「国家のための個人」に180度転換する点にあります。伊藤所長は、「このような転換がなされれば、人権の保障度が弱められるばかりか、個人の尊重原理から人権の主体と位置づけてきた子どもの地位が、再び『保護の対象』に成り下がるおそれがあります。いや、保護の対象どころか、国家の発展のための『犠牲を強いられる対象』になりかねないおそれすらあります」と警鐘を鳴らします。

 特集論文3本目は、ジャーナリストの布施祐仁氏の「『戦争のできる国』にするための『人づくり』」です。ここでは安倍政権が@自衛官の経済的な待遇を改善することによって「経済的徴兵制」の傾向を強化すること、そしてA自衛隊への理解を促進するという安全保障教育を通して子どもに国防意識を醸成させていくこと、をみすえているということが明らかにされます。「戦後の日本の教育は、教育が国家の戦争遂行の手段として使われてしまった戦前の痛苦の反省から、日本国憲法の『個人の尊重』という基本理念に基づき、個人の『人格の完成』(教育基本法)がその目的に据えられました。しかし、安倍政権はこうした理念を放棄し、教育を『海外で戦争ができる国』にするための『人づくり』のために利用しようとしているのです。」

【書籍情報】
2017年8月に本の泉社から発行された『子ども白書2017』の特集。編者は日本子どもを守る会。定価は2000円+税。




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