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『日本国憲法VS自民党改憲案 緊迫!9条と96条の危機』



上脇博之著/日本機関紙出版センター/2013年5月/定価900円/A5判100ページ

改憲には限度がある

 2013年参院選が近づくなか、改憲手続きを定めた96条の改憲が浮上。自民党など保守政党が憲法の平和条項、9条を変えるために改憲のハードル引下げを狙っているのだ。
 自民党など保守政党は、なぜそこまでして9条改憲に執着し、どんな方法で改憲しようとしているのか。そして、政権与党に返り咲いた自民党の改憲案(2012年4月発表)の内容はどのようなものなのか。憲法学の専門家として、これらの問題に真正面から挑み明らかにしたブックレットである。歴史の歯車を元に戻させてはならない、との思いが込められた労作だ。コンパクトにまとめた緊急出版とはいえ、憲法とは何かという基本に立ち返りながら、自民改憲案を反面教師に、日本国憲法をじっくり学べる学習書でもある。
 第1章では日本国憲法を歴史的に掘り下げる。世界史的に近代・現代憲法として位置づけられ、日本史的にも制定の経緯を振り返り、押しつけ論を否定。そのうえで既存の憲法とは異質の「限界を超えた」憲法改正は無効であり「新憲法の制定」になると指摘。改憲には、超えてはならない限度があるのだ。「限界を超えた憲法改正」は本書を貫くキーワードである。
 第2章では、9条改憲は米国と財界の要求であって、集団的自衛権を行使して米国の戦争に加担するためであることを明らかにし、改憲を掲げる各政党の改憲論をまとめている。
 自民党改憲案を解説した第3章はとくに熟読したい。前文を全面改訂し日本の侵略戦争の責任を否定し、国防軍を新設するなど、平和主義を否定。それだけに留まらない。基本的人権の考え方が、第12条に「自由及び権利には責任及び義務が伴う」を挿入するなど、本質的に変更されていると指摘。
 1字、1句の違いにも、自民改憲案の後退面を著者は見逃さない。たとえば、第13条の「すべて国民は、個人として尊重される」について、自民案では「個人」を「人」に変更。前文などと考えあわせると、「個人の尊重」削除と評せられるとする。
 統治機構についても、国会審議での定足数の削除、総理大臣の権限強化、地方自治の後退等々…。平和主義、国民主権、基本的人権だけでなく、統治機構にも本質的変更をもたらす自民改憲案は「憲法改正の限界を超える違憲の改憲」になると指摘する。
 最終章では、2007年に成立した「憲法改正手続法」や96条改憲論の問題点を洗い出す。「憲法改正手続法」は、憲法改正の限界を超えた場合の無効訴訟の規定がなく、最低投票率の規定もないなど違憲の欠陥法であり、廃止すべきだと主張。
 96条の国会発議の要件緩和も、少なくとも違憲の選挙制度、違憲の憲法改正手続法の下では、憲法改正の限界を超え違憲だと指摘。「今の衆参の非民主的な違憲の選挙制度のもとでは、民意に基づかない憲法改正の発議が強行される危険性が高い」。この間の政治を見れば、その通りと言わずにいられない。



 

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