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書籍『手記 反戦への道』

H・T


日本興亜損保の社長・会長、経済同友会副代表幹事・専務理事を経て現在は同会終身幹事・国際開発センター会長であるとともに、戦争を告発し憲法9条の理念の実現を訴えて精力的な活動を続け、また全国革新懇の代表世話人でもある品川正治さんの近著です。

異彩を放つ経歴を持つ86歳の品川さんの秘密はどこにあるのでしょうか? これまでの講演や著書において、戦争経験やこれからの日本の座標軸を語って来られた品川さんが初めて明らかにした自伝である本書は、この疑問に余すところなく答え、氏の原点を明らかにしています。生まれてから24歳までの、激しくも香り高い思想形成史、自己形成史でもあります。

軍部と天皇制が日本の支配を強めつつあるなかで、品川さんは、友や家族をこよなく愛し、知的好奇心が旺盛で文学や哲学に接して自己と格闘し、「国家」とは何か、「戦争」とは何かを真正面から考える青年になりました。学問や人との交わりは飾り物や生活の手段ではなく、生き方に直結するものでした。旧制高校2年生になった品川青年は、軍部を批判した親友の責任を取るとともに陸軍大臣等に豪胆な嘆願書を出し、中国奥地の激戦地に召集されて行きます。そこで殺し殺される凄惨な戦争を経験します。撃ち込まれた銃弾は今も足に残っています。
 戦闘で実感したのが、戦争を国家でなく人間の目で見るという視点でした。それは取りも直さず9条の精神であり、復員船の中で憲法草案に接した品川さんはこれこそ人類の指針となるものだと、戦友たち皆で泣きました。アジア・太平洋戦争をもって「戦争を終える(終戦)」―これが品川さんの原点になりました。戦争反対の思想の背後には人間に対する愛と真実を徹底して追求する精神が屹立しています。経歴からも感じられる自由奔放とも思える生き方は、強靭な自律の精神に裏打ちされていることが伝わってきます。

 本書の「まえがき」で、日本が真に直面している問題は憲法9条と日米安保条約との矛盾、相克であることを明快に指摘しています。そして、今、普天間基地の撤去を求める運動は、沖縄の問題ではなく日本の問題として上記の矛盾、相克を克服すべき契機となっているとし、避けて通れない時代認識の重要性を覚醒させてくれています。武器輸出禁止3原則というけれど、米軍基地こそ最大の武器であり何百隻もの浮沈空母であるという告発にははっとさせられます。「私はこの(9条の)旗の下で、真っ直ぐに進む」という品川さんの姿は、得意の剣道でいえば王道に大胆に踏み込む「面」を彷彿とさせます。瑞々しく、花もある文体は、文学作品としても優れていると思います。

【書籍情報】品川正治著 新日本出版社 2010年9月刊 本体価格1600円+税

 

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