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書籍『憲法と沖縄を問う』

K・T


 「表題には、実は2つの視角、視点が込められている。1つは、『憲法から沖縄の諸問題を問う』ということであり、もう1つは、『沖縄から憲法にかかわる諸問題を問う』ということである。この2つの視角、視点を交差させることによって、憲法、そして沖縄にかかわる諸問題を浮き彫りにすることがこの本のねらいである。」(p.@)と、“はしがき”に記された言葉は、本書に込められた思いを凝集しています。安保改定50年の節目の年、はからずも普天間基地“移設”問題が政権を揺さぶる事態を招き、沖縄に社会の関心が寄せられているこの時期、本書が刊行されました。

 「沖縄は、未だに主権と人権の根幹にかかわる問題、あるいは日本国憲法の真の実現にかかわる問題を提起し続けている」(p.A)

 上記引用文中の“未だに”という言葉を、私たちは重くうけとめる必要があるのではないでしょうか。
 第2次大戦後も長くアメリカの統治下におかれ、“本土復帰”後も在日米軍基地の実に75%が集中するという沖縄では、基地被害はじめ多種多様な人権侵害実態が存在します。同時にそれらの人権侵害に抗して、実に数多くの訴訟がとりくまれていることに、本書を通して改めて気づかされます。「憲法番外地」とさえいわれる沖縄でこそ、憲法12条に謳われる「憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」という理念が最も深く根付いているのかもしれません。

 本書の大きな特徴は、沖縄と憲法、というテーマについて、憲法研究者と沖縄にかかわる訴訟に携わる実務家とが連携して執筆されていることです。それゆえ本書は、“沖縄”という素材から憲法の考え方・本質に迫り、同時に司法の場で憲法が“沖縄”問題の解決にいかなる役割を果たし得るかという実践的課題の提起ともなっています。
 例えば、駐留軍用地特措法の合憲性をめぐる争いを素材に、憲法29条3項の「公共のために用ひる」の“公共性”を「軍事的公共性」にすり替え、財産権の制限を正当化する判決の不当性を、本来の「市民的生存権的公共性」の観点から検証し、「『グローバル』安保に対する立憲主義的統制をいかに構築するのか、そういう課題を沖縄は提起している。」(p.42)との指摘は憲法の本質にかかわるものであり、また沖縄における開発や基地による環境破壊に抗する訴訟での「環境権の思想を現実の法適用の場面でより具体化していく作業」(p.45)は、憲法理念を司法の場でより進化させる試みともいえましょう。

 沖縄の声に耳を傾けることで、私たちはよりいっそう憲法の価値に確信を深め、憲法の内容をよりいっそう豊かに育み活かしていくことができるでしょう。

 尚、本書の構成は以下のとおりです。
はしがき
第1章 総論 井端正幸(沖縄国際大学教授)
第2章 沖縄と基地(1)――2つの法体系と基地問題 新垣勉(弁護士)
第3章 沖縄と基地(2)――「国家の安全保障」と「人間の安全保障」の間で 高作正博(関西大学教授)
第4章 沖縄と基地(3)――軍用地の強制収用問題 徳田博人(琉球大学大学院教授)
第5章 沖縄と自然保護 加藤裕(弁護士)
第6章 沖縄・平等・家族――上原智子(弁護士)
第7章 内心の自由と沖縄靖国訴訟 高橋義人(琉球大学大学院法務研究科准教授)
第8章 表現・歴史・民主政――教科書検定と沖縄の「民意」 高作正博(関西大学教授)
第9章 知る権利と防衛情報――那覇市情報公開決定取消訴訟事件 仲山忠克(弁護士)
第10章 沖縄における生存権 高田清恵(琉球大学大学院准教授)
第11章 学問の自由・教育権・学習権 高良鉄美(琉球大学法科大学院教授)
第12章 沖縄の雇用・失業問題 矢野昌浩(琉球大学教授)
第13章 沖縄における地方自治 渡名喜庸安(琉球大学法科大学院教授)
第14章 沖縄における自治の実践――県民投票・市民投票 井端正幸(沖縄国際大学教授)
第15章 国家主権と人権 比屋定泰治(沖縄国際大学准教授)

【書籍情報】井端正幸・渡名喜庸安・仲山忠克編著 法律文化社 2010年7月 (定価 本体2,000円+税)

※本書に収載されている論文の筆者のうち下記の方々には、以前当サイト「今週の一言」のページに登場していただいていますのでご案内します。
 新垣 勉さん「軍隊を持つことの弊害を考える」(2005年2月21日)
 高作正博さん「『もし憲法がなかったら…』を沖縄から学ぶ」(2006年11月13日)

※沖縄と憲法に関わる文献は、当サイト憲法文献データベースでも検索いただけますので、ご案内します。

 

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