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論文「最高裁裁判官の任命慣行の問題点」

Y・S


 昨年8月、新聞の意見広告で最高裁判所裁判官2名に国民審査で「×」印をつけるよう呼びかける運動が展開されました。
 第21回最高裁判所裁判官国民審査においてのことで、全国紙に全面広告として掲げられました。
 「一人一票実現国民会議」による運動でした。
 同会議は、議員定数不均衡訴訟を展開している団体で、この運動も、定数不均衡を合憲とした最高裁裁判官に対して展開されたものです。
 この運動が審査の結果に及ぼした効果について、一定の評価を与える論説が、1年ぶりの憲法特集を行った法律実用誌「ジュリスト」の1400号に掲げられていたので紹介します。
 今関源成「最高裁裁判官の任命慣行の問題点」(同誌27頁以下)において、この運動の結果、対象となった2名の裁判官の×票比率(7%台(裁判官9名全員の比率は6%台)・東京では10%台(同じく8%台))が、運動が一定の影響力を持ったことを示すものであると評価されました。
 また、裁判官個人の判決行動をきちんと考慮して投票する国民の存在は、人選過程が透明化され、適切な情報提供がなされれば国民審査が機能する可能性を示唆するものとされています。
 同論文は、「はじめに」で最高裁裁判官の任命がブラックボックス化している現状の分析と、それを正当化する論理が「司法の独立」にあることを示し、続く「T 任命慣行」において、不透明な決定プロセスについて分析する前提となる限られた資料を示します。
 「U 慣行と憲法規定の乖離」では任命に関する憲法と裁判所法の規定を解説して、任命慣行との対比をすることで問題点を明らかにします。
 「V 任命慣行の問題点」は、「1 司法の民主化」「2 司法の独立」「3 違憲審査の担い手」と項目が分けられています。
 まず、「1」において、現在の慣行が政権政党への政治的配慮がなされているのではないかという疑問が提示されます。冒頭の「国民会議」の運動への評価もここで示されます。
 次に、「2」において、最高裁裁判官の人選を最高裁長官と事務総局が行うことを「司法の独立」を援用して簡単に正当化することへの問題意識が示されます。
 さらに、「3」において最高裁裁判官の構成が違憲審査の担い手にふさわしいものであるか検証を加えて、最高裁主導の任命慣行の当否を問うています。
 最後に「むすび」において、政権交代を経た後も依然として透明性を欠いた任命過程の現状が示され、政権交代によってこれまで「司法の独立」を掲げて守ってきた領域への政治介入の危険が予想されるため、あらかじめ手続の公式化を図るべきであるとの見解が示されます。
 そして、裁判官が公正さを示し国民の信頼を得るのは、あくまで裁判手続の公正と法的推論の説得力によるべきであるとされ、「国民的基盤」に基づく裁判官の判断がなされるための枠組みを示されて締めくくられます。
 政権交代を経た現在、司法の民主的統制について、私たち一人一人が思いを致し、努力しなければならない社会を迎えているのではないだろうかと気づかされる論説でした。 

【論文情報】執筆者今関源成 ジュリスト2010年5月1-15日合併号(No.1400)特集「憲法訴訟と司法権」有斐閣 (定価1,700円(本体1,619円))

 

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