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書籍『市民と憲法訴訟』

K・T


「本書は、人権侵害を主たる争点として、国家の為政者の行為である、立法や行政処分を憲法に基づいて無効であるとして主張する市民に焦点を合わせ」(本書はじめにp.A)た「憲法訴訟の理論と実践についての考察」(同p.@)の書です。
著者遠藤比呂通氏(論文「“もう一つの”憲法入門」をあわせてご参照ください)は、憲法学者として東北大学で教鞭をとられた後、大阪市・釜ケ崎地区の法律事務所で弁護士活動をされています。

本書で考察の対象にとりあげられた憲法訴訟は、いずれも“周縁化された市民”、すなわち「法の下で憲法上の権利の行使が最も制限される人々」(p.244)を当事者とするもの。著者のスタンスは、明快です。端的に、「憲法訴訟論が、どういう主張をすれば勝ちやすいかという極めて実践的なもの」と位置づけ、各訴訟・判例が一貫して裁判官の「思考形式の正確な理解と限界の認識」という観点から分析・検証されているところが、本書の大きな特徴です。

本書の構成は、以下のとおりです。

はじめに―市民と憲法訴訟

第1部 憲法訴訟と事実の認定
 第1章 立法事実 
 第2章 要件事実 
 第3章 司法事実 
 第4章 歴史
第2部 周縁化された市民の憲法訴訟
 第5章 沖縄反戦地主
 第6章 ホームレス状態にある人々
 第7章 ハンセン病療養所に隔離された人々
 第8章 在日高齢者
第3部 刑事訴訟における市民の権利の位相
 第9章 刑事手続における沈黙の自由
 第10章  取調受忍義務論の意義と限界
 第11章  死刑と適正手続
 第12章  市民参加と刑事陪審

むすび―憲法訴訟の当事者としての市民
あとがきにかえて―同業者諸氏へ

日本の裁判所は、憲法判断に消極的といわれてきました。しかし、わずかながら変化も生まれているのではないでしょうか。2008年4月のイラク派兵差止訴訟における名古屋高裁判決の例や、同年6月の国籍法3条違憲判決(最高裁)、1票の格差が争われた事件の9例の高裁判決、また本年3月、公務員の政党紙配布行為への罰則適用を違憲と判じ、逆転無罪を言い渡した東京高裁の例(堀越事件)は記憶に新しいところです。
本書では、“憲法上の権利の制約をより少なくする方策の存在、その方策によっても立法目的が達せられるか否か”に、合憲・違憲の判断がかかってくるという観点から、特定事件の特定の事実たる「司法事実」と特定的事実から抽出される一般的事実としての「立法事実」とを併せた「憲法事実」が、憲法訴訟において裁判官に憲法判断を迫る上で極めて重要であることが指摘されています。“憲法を出したら負ける”といわれてきた日本の裁判状況が変わりつつあるこんにち、本書の意義はいっそう高まっているものといえるでしょう。


【書籍情報】遠藤比呂通著 信山社 2007年5月 (定価 本体価格3,600円+税)

 

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