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書籍『米軍違憲――憲法上その存在を許すべからざるもの』

K・T


今年2010年は、安保改定50年の節目の年にあたります。この間、国内的にも国際的にも、安全保障をめぐる情勢は大きく様変わりしてきました。しかし、1952年に旧安保体制の発足以来、1960年の現安保体制確立以後現在に至るまで、日本に米軍基地が存在するという事態に変動はありません。
日米安保条約の本質が「軍事同盟」であり、憲法9条に違反することは、当初から指摘されていましたが、政治家が自ら「日米間を『同盟』(alliance)と規定するのは憚られていたことは、忘れるべきではありません。」(森英樹教授「『政権交代』と憲法」法学館憲法研究所報第2号所収論稿)

「同盟関係」とは、元来、自国への攻撃がなくても同盟国に攻撃があれば、相手国に対して共同行動をとることを意味します。これが紛争解決の手段として武力行使を禁じた日本国憲法はもとより、国連憲章の理念に照らしても容認されていないものだからこそ、口にすることが“憚られて”いたのです。しかし、いまやあたりまえのように使われる「日米同盟関係」というフレーズ。ここに“対等な”という修飾語をつけ、あたかも前政権とは外交姿勢が異なるかのようなポーズを示した現政権も、普天間基地移設問題では米国の顔色を伺いつつ問題を先送りしているのが現状です。

「沖縄・日本から米軍基地をなくす草の根運動」の設立者であり、共同代表を務める本書著者平山基生さんは、駐留米軍を「違憲」と明解に断じた砂川事件・伊達判決の今日的意義を熱く説いています。現在焦点となっている、普天間基地移設・辺野古新基地建設問題を考えるときに、この伊達判決が有効な視座を与えてくれる、著者のそんな思いが伝わってきます。

1955年、砂川町(現立川市)の米軍基地拡張のための土地接収に抵抗する大きな闘争が盛り上がります。この闘争で逮捕起訴された刑事事件の一審判決が、1959年の伊達判決です。外国軍隊の存在を日本国憲法に反すると断じた論拠は、「(前略)合衆国軍隊がわが国内に駐留するのは(中略)わが国政府の要請と、合衆国政府の承諾という意思の合致があったから」というものでした。(伊達判決全文は本書p.125〜)安保改定目前に出されたこの判決に慌てた日本政府と米国は、密約によって司法に干渉し“跳躍上告”という“裏技”を使って最高裁に持ち込みます。最高裁は、広く知られるとおり“高度の政治性を有する問題は、司法判断になじまない”とする「統治行為論」でもって伊達判決を破棄しました。

本書では、伊達判決を生み出すきっかけとなった砂川闘争の経緯も詳細に描出されています。土地接収に抗して町ぐるみの闘いがとりくまれました。それは、ときの中央政府の横暴に歯止めをかける住民自治の原点を示しています。当研究所も、白藤博行教授(専修大学)を迎えて第4回公開研究会「地方自治と憲法」を行ないます。
また、伊達判決を破棄した最高裁判決は、内容の問題性もさることながら、米国の圧力を受けた日本政府による司法への干渉の例証であり、本書は戦後司法のあり方についての重大な問題提起をなすものでもあります。当研究所の連続講演会「日本国憲法と裁判官」(第11回)では、『戦後裁判官物語(全10巻)』という大河小説を執筆中の元裁判官からのお話も伺えます。地方自治や、戦後司法のあり方と憲法との関わりについてご関心をお持ちのみなさまに、あわせてご案内します。

【書籍情報】平山基生著 本の泉社マイブックレットNo.14 2009年12月(定価本体800円+税)

 

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