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書籍『憲法九条は自治体の宝――首長たちはなぜ「頑固に九条」なのか』

K・T


2008年2月8日、画期的な九条の会が誕生しました。「憲法九条を守る首長の会」です。06年3月に結成された「みやぎ憲法九条の会」の呼びかけ人の中に首長経験者が4人いました。この方たちが中心となって、「宮城県内二〇名ほどの首長経験者に声を掛け、一四名の賛意を得て、正式結成となった」(本書p.3)そうです。
本書を読むと、「なぜ自治体首長は党派を超えて九条を守ろうとしているのか」「自治体と九条の間にはどんなつながりがあるのか」といった疑問への答が、じんわりと浮かび上がってきます。

本書は、
 第一部 住民の安全・安心を守るのが九条だ
 第二部 九条の改正は地方自治を脅かすものだ
 第三部 〈座談会〉首長はなぜ憲法九条を大切にするのか
と構成され、第一部の執筆者川井貞一さんは、かつて白石市長、全国市長会副会長を務められた方であり、第二部執筆者鹿野文永さんは鹿島台町長、全国町村会副会長の経験者です。また、第三部の座談会出席者も、鹿野文永さん以外に元松山町長、元岩出山町長、元七ヶ宿町長、元山元町長、(紙上参加者:元栗駒町長、元鴬沢町長、元南郷町長)といった方たちが名を連ねています。

本書には、首長経験者の皆さんが在職当時、どんな思いで憲法に向き合ってきたかについて具体的にかつ率直に記されています。例えば、「自治体首長と自衛隊の関係は深いものがあります。鹿島台町も、水害のときには、自衛隊からすごい応援をもらいました。」(p.49)「首長としては、自衛隊の募集事務をやり、自衛隊父兄会などに助成を行ってきました。九条を守ろうと非武装・中立を語り、自衛隊は違憲といいつつ、現に自衛隊と関わりを持ち、国の安全保障や町民の安心・安全を問われると、首長としては現実的対応をしてしまう。この言行不一致に内心忸怩たるものがあったのです。」(p.64)
しかし、「憲法九条が変えられて、戦争ということが声高に叫ばれるようになると、戦争に必要だということで、『国民保護法』で地方の仕事を国が決めていくことになります。そうなると、地方はまた中央集権に逆戻りしてしまいます。戦争ということになると、地方政府の確立などというものは、あっと言う間に風前のともしびになってしまう」(p.44)。
だからこそ、「これまで果たしてきた役割、果たさざるを得なかった出来事についても、しっかりもう一度思い出して、よく吟味し直しながら、さらに憲法の重要性に鑑みて(九条の会の)各種の活動を展開するべきではないか」(p.86)という元首長の方たちの訴えに深さと厚みがあるのです。

憲法92条にいう地方自治の本旨とは、住民の福祉増進と地方行政の健全な発展を目指すこと、といえるでしょう。「地域主権国家への転換」をマニフェストに掲げた民主党政権。その政策は、ときに現実的な対応を迫られることに悩みながらも、憲法の価値を貫こうとしてきた本書に登場する首長経験者の方々の想いに応えるものとなるのでしょうか。
当研究所の公開研究会「現代の諸問題と憲法」の第4回(2月20日)のテーマは、「地方自治と憲法」です。憲法的な視点から地方自治のあり方を問い直す機会として、あわせてご案内いたします。

【書籍情報】憲法九条を守る首長の会編著 かもがわ出版 2009年12月 (定価本体952円+税)


 

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