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特集「始動 裁判員制度」

K・T


 本年5月21日裁判員法が施行され、8月から裁判員裁判の公判が始まりました。それから4ヶ月。当初過熱気味だった報道も、やや落ち着きつつあるようですが、東京地裁から始まった各地裁での裁判員裁判の動静を伝える報道は続いています。裁判員裁判への市民の関心が一過性のものではないことの証左ともいえるでしょう。
 今回ご紹介するのは、この4ヶ月間をふりかえって、裁判員裁判の現状を確認し今後の課題を探る、特集「始動 裁判員制度」(法学セミナー2009年12月号所収)です。

 本特集に収録された座談会「裁判員裁判の経験と課題――制度開始直後の運用を見て」では、後藤昭教授(一橋大学)が司会を務め、日弁連裁判員実施本部委員・取調べの可視化実現本部事務局次長をお務めの坂根真也弁護士(東京弁護士会所属)、裁判員裁判に弁護人として関わってこられた村木一郎弁護士(埼玉弁護士会所属)、刑事法学がご専門の加藤克佳教授(愛知大学法学部・大学院法務研究科)が、これまでの裁判員裁判のありようをふりかえり、改善すべき点と今後の展望を語り合っています。
 座談会では、裁判員へのアピール度の高い視覚的なプレゼンテーションが追求されるあまり、立証と主張の区別があいまいになる可能性の問題や、公判前整理手続期日から裁判員の招集をかけるまで8週間以上空ける扱いによって、保釈されない限り未決勾留期間が2ヶ月以上に及ぶ問題など、これまでの裁判員裁判の運用で明らかになってきた改善すべき課題が指摘されています。同時に、これまでの“業界の阿吽の呼吸”が通用しなくなったことで、減刑を見越した求刑の“よく分からない要素の上積み分”がなくなり、“求刑が、いわば可視化された”という透明性がもたらされていることも。
 また、被害者参加制度が裁判員に与える影響に関わって、刑事裁判の基本原則、『無罪推定』や『疑わしいときは被告人の利益に』などの原則がなおざりにされることのないように、裁判所がしっかりと説明し裁判員に理解してもらう必要があるとの指摘は重要です。

 現時点でみえてきた幾つかの運用上の改善点と積極面。とはいえ、公判開始からまだ4ヶ月。死刑事件、大型否認事件、責任能力が争われる事件などが登場するのはこれからです。裁判員制度の是非を机上で論ずるよりも、不具合が判明すれば運用で可能な限りその都度直す柔軟性と、基本原則の堅持という姿勢が求められるのではないでしょうか。それを見守り育てるのは、私たち市民の役割です。
 この座談会で、裁判員裁判は、刑事司法に変化をもたらすにとどまらず、「罪を犯す人を異物化しない見方が育まれ、それが時間をかけてゆっくり積み重なっていくことで、日本の社会に大きな変化をもたらす」と述べられていることは大変印象的でした。

 本特集には、ここにとりあげた座談会のほか、
「動き始めた裁判員裁判」後藤昭(一橋大学教授)
「公判前整理手続の現状確認」宮村啓太(弁護士)
「被害者参加制度の現状確認」鈴木一郎(弁護士)
以上の論稿と、
青木孝之(駿河台大学法科大学院教授・弁護士)/片山徒有(被害者と司法を考える会代表)/平山真里(白鴎大学専任講師)/毛利甚八(作家)
以上の方々による裁判員裁判傍聴記が収載されています。

【書籍情報】法学セミナー2009年12月号 特集『始動 裁判員制度』 日本評論社

連続講演会「日本国憲法と裁判官」第9回では、長く刑事裁判に携わってこられた二人の元裁判官からお話をうかがいます。刑事裁判における過誤の問題、量刑の問題についても考える機会となるでしょう。あわせてご案内します。


 

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