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書籍『司法官僚―裁判所の権力者たち』

K・T

“司法官僚”、という言葉の響きは、通常、“司法の独立”の考え方とは対極に位置するイメージをもたらします。ところが、“司法官僚”の存在が、行政機構の一角たる司法省のもとにおかれてきた戦前の司法行政から脱却し、戦後憲法の下で“司法の独立”を確保しようとする過程において生まれてきた、と知れば驚きを禁じ得ません。とはいえ、そもそも“司法官僚”とは誰を何を指すのか、これまた正確に説明するのは難しい。
本書は、これまで厚いベールに包まれてきた、司法行政の在り方とその問題点に大胆にメスをいれ、改革のための方向性を指し示すものとなっています。

著者は、行政学がご専門の新藤宗幸千葉大学法経学部教授。現在の司法制度改革においては司法における“裁判部門”の“改革”ばかりが脚光を浴び、“司法行政部門”の“改革”がなおざりにされているのではないか。また、これまで行政学が行政官僚機構に研究の焦点をあてており、司法官僚機構が十分対象化されてこなかったのではないか。これらの点が、新藤教授の問題意識の核となっています。

本書は、まず“司法官僚”の組織と構成員とを明らかにし、現在の司法システムにおいて“司法官僚”、即ち最高裁事務総局に配されるエリート職業裁判官がいかに養成されているのかを、彼らのキャリアパスからつぶさに検証していきます。ついで、絶大な人事権を握ることで、憲法上「自立」を保障されたはずの高度な職業専門家たる個々の裁判官を「支配」し、裁判内容にまで影響を及ぼしていく実態を分析し、最後に、裁判所をどう変えるのか、司法行政機構改革の核心に迫る提言がなされています。

憲法上明文化された「戦前期司法からの断絶を象徴する司法権の独立と行政府・立法府への抑制という戦後司法改革の理念」(p.36)の一方で、最高裁は「『司法の独立』の維持のために事務総局の組織強化」(p.39)に拘泥し「『司法への政治の介入』を防ぐとして、逆に政権に『同調』し、『司法の政治化』問題を引き起こす。」(同)
であればこそ、著者は、権力集中した最高裁事務総局から、本来の意思決定機関であるべき裁判官会議の復権(1)、裁判官人事システムの改革(2)、裁判所情報公開と制定と市民参加(3)、最高裁事務総局・事務局の再編(4)を提言するのです。
とりわけ、司法への市民参加を実質的なものにするという観点から、裁判所情報公開法の制定を強調されているのが、本稿筆者には印象的でした。市民参加が、裁判部門に限られることなく、司法行政分野にも及ぶことの必要性、重要性。「裁判官と裁判所の『自立』のないところでは、市民の生活は脅かされざるをえない。」(p.238)

本書では、全国裁判官懇話会や日本裁判官ネットワークなどで重要な役割を果たしてこられた、元裁判官の方々のお話も紹介されています。当研究所も連続講演会「日本国憲法と裁判官」で、本書に登場する宮本康昭氏・福島重雄氏・花田政道氏・安倍晴彦氏・伊東武是氏らをお招きしてお話をうかがってきました。次回は10月21日です。あわせてご案内します。

【書籍情報】新藤宗幸著 岩波新書 2009年8月刊行(定価 本体780円+税)

 

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